2016年2月23日(火)
きょうの潮流
俳優の斎藤工(たくみ)さんが、ある番組で「安倍首相の“功績”は若い人を目覚めさせたこと」という趣旨を話していました。同様に高市早苗総務相の“功績”は、「表現の自由」への関心を呼び起こしたことといえるかもしれません▼各紙が高市総務相の“電波停止発言”をめぐり、放送法の特集をしています。本紙でも「『放送の自由』とは何か?」を連載。放送法の眼目が、放送の政府からの独立にあることを見つめました▼高市総務相が放送への介入の根拠にしているのが、「政治的に公平であること」などをうたった放送法第4条です。放送の持つ公共的使命を考えれば、これ自体に異論がある人はいないでしょう。しかし番組を公平か否か、政府が審査するとなれば話は別です▼思い出すのは2001年、当時官房副長官だった安倍氏が「政治的公平」を迫ったことで起きたETV番組改ざん事件です。この番組は日本軍「慰安婦」を扱ったものでした。介入の結果、NHKは加害兵士の証言などを削除。今度の高市総務相答弁では、「憲法9条」をめぐる番組も停波の対象になることを示唆しました。標的にされるのは、常に政権の意に反する放送です▼14年の総選挙の際、自民党はNHKと民放キー局に、「政治的公平」を文書で要望。その結果、12年の衆院選の同期間に比べて選挙関連の放送時間が約4割減ったという報道もあります▼権力をチェックするはずのマスメディアが権力にチェックされる。犠牲になるのは国民の「知る権利」です。