2016年1月29日(金)
山下書記局長の代表質問
参院本会議
日本共産党の山下芳生書記局長が28日の参院本会議で行った代表質問は次のとおりです。
私は、日本共産党を代表して安倍総理に質問します。
まず、甘利大臣の口利き疑惑についてうかがいます。甘利大臣は、国会質疑で、現金の受け取りを否定しませんでした。大臣室で会ったことは覚えているのに、50万円を受け取ったかどうか「記憶があいまい」というのは、国民の常識では考えられません。この疑惑は、あっせん利得罪にかかわる重大な問題です。大臣どころか国会議員の資格が問われています。総理は、甘利大臣まかせで“見守る”という態度ですが、それでは済まされません。総理が任命した主要閣僚の重大疑惑です。総理自ら真相究明に責任を負うべきではありませんか。
戦争法廃止、日本を「海外で戦争する」国にする準備は中止を
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通常国会がはじまった1月4日、議員会館の前は3800人の人々で埋め尽くされ、昨年、安倍政権が強行した安保法制=戦争法廃止の声が響き渡りました。翌5日、新宿駅に5000人、そして19日、国会周辺には5800人の人々が集まりました。「餅を食べたら熱は冷める」どころか、地下にたまったマグマのように「戦争法廃止」の声はさらに熱を帯び、安倍政権に迫っているのです。世論調査でも戦争法反対は過半数を超えています。
総理は、こうした国民の声をどう受け止めるのか、何度問われても、「世界の多くの国々から強い支持と評価が寄せられている」と繰り返すばかりです。しかし、この国の主権者は、外国政府ではなく国民です。その国民から「強い支持と評価」どころか、強い反対の声が上がり続けている現実をどう受け止めているのですか、逃げずにお答えください。
自衛隊が外国人を殺し戦死者を出す現実的危険
戦争法の強行によって、日本の自衛隊が、戦後初めて、外国人を殺し、戦死者を出す、現実的な危険が生まれています。
政府は、南スーダンで活動する自衛隊のPKO部隊に、他国の部隊等を守るための「駆け付け警護」など新しい任務を与えようとしています。しかし、南スーダンでは、停戦合意が事実上崩れ、政府と反政府勢力による武力衝突が繰り返され、住民と兵士が入り乱れた紛争が続いています。さらに深刻なのは、11歳〜17歳の子どもたちが1万人以上、少年兵として戦闘に駆り出されていることです。
このような地域で、自衛隊が「駆け付け警護」にあたれば、自衛隊員の向けた銃口の先にいるのは、住民や子どもたちとなるのではありませんか。いま全国のママたちが、「世界のどの子も殺させたくない」「夜も眠れない」と不安の声をあげています。総理は自衛隊にそのような命令を下すつもりですか。
昨年末、パリで同時テロ事件が起きました。テロはいかなる理由があろうとも絶対に許されない卑劣な犯罪行為です。同時に、戦争でテロをなくすことはできません。逆に憎しみを広げ、テロと戦争の悪循環をもたらし、世界中にテロを拡散させることになることは、アフガニスタン報復戦争とイラク侵略戦争の後、世界のテロの発生件数、犠牲者数が10倍に増えた事実が証明しています。
その点で危惧されるのは、安倍政権が、戦争法案の審議の際、過激武装組織ISに対する空爆への軍事支援について、「政策としてその道はとらない」としつつ、「法律としては可能だ」と答えていることです。
昨年末、私は、菅官房長官に、米国から、ISに対する空爆への軍事支援を要請された場合、断ることができるのかと何度もただしましたが、官房長官から「断る」との答弁はありませんでした。総理も同じ立場ですか。ISに対する軍事作戦に自衛隊が参加すれば、日本が憎しみの連鎖を拡大することになり、日本国民がテロの危険にさらされることになります。
憲法9条をもつ国で、こんなことは絶対に許されません。日本共産党は、憲法違反の戦争法を廃止し、集団的自衛権行使容認の「閣議決定」を撤回することを強く求めます。
「海外で戦争する」ための準備が急速に進行
戦争法の強行と並行して、日本が米国とともに「海外で戦争する」ための準備が、自衛隊の装備、訓練、米軍配置の面で、急速に進められていることも重大です。
まず装備の問題です。安倍政権は、来年度の予算案で、当初予算としては初めて5兆円を超える大軍拡予算を組みました。しかも、その中身は、オスプレイ4機、ステルス戦闘機6機、無人偵察機3機、米軍機にも対応する新型空中給油機1機、新イージス艦1隻など、もっぱら海外と日米共同作戦での運用を目的としたものにほかなりません。
米軍との共同訓練はどうでしょうか。昨年8月から9月にかけて、アメリカのカリフォルニア州で大規模な日米統合演習がおこなわれ、海上自衛隊のヘリ空母「ひゅうが」が参加しました。「ひゅうが」の甲板に米海兵隊のオスプレイを繰り返し離着艦させる訓練や、ホーバークラフト型揚陸艦で武器や物資を前線に輸送する訓練が実施されました。米軍と一体となった武力行使のための訓練であることは明らかです。
首都東京に居座る米軍横田基地も大きく変わろうとしています。米空軍の特殊作戦用オスプレイ10機を配備するとともに、特殊作戦飛行隊を指揮する新司令部を創設して、アジア太平洋地域における米軍特殊作戦の一大拠点としようというのです。それだけではありません。戦争法を実行する日米の統合司令部ともいえる「同盟調整メカニズム(ACM)」の実行組織も横田に設置されました。まさに首都東京が戦場と直結することになります。
総理は、施政方針演説で、これらの問題には一切言及されませんでした。国民に隠れて、日本を「海外で戦争する」国にするための準備は、ただちに中止すべきではありませんか。
辺野古新基地固執こそ、「普天間固定化」の元凶
総理は、沖縄県名護市辺野古での米軍新基地建設について、「埋め立て面積は、普天間の3分の1、機能も減少し、騒音対策が必要な住宅はゼロになる」といわれました。
しかし、私は昨年3月の予算委員会で、総理のこの言い分が事実に反することを明らかにしました。辺野古の海を埋め立ててつくられる新基地は、キャンプ・シュワブ、辺野古弾薬庫と一体で運用され、現在の普天間基地の面積の5倍、滑走路も2本に増やされ、強襲揚陸艦が接岸できる軍港としての機能をもつなど、米海兵隊の巨大な出撃拠点となります。岸田外務大臣も、米軍が基地機能の拡張計画を持っていることを認めました。
騒音問題もしかりです。辺野古をとりまく地域には、すでにオスプレイが発着できる米軍のヘリパッドが多数存在し、住宅の真上を飛ぶなど、辺野古周辺の住民は大きな騒音被害をいまも受けています。そのうえ新基地がつくられたら、騒音がひどくなることは火をみるよりも明らかであり、中谷防衛大臣も、防音対策の必要性を認めました。
総理、事実に反する主張を、いつまで続けるつもりですか。
そもそも、普天間基地を辺野古に「移設」しなければならない理由などどこにもありません。普天間基地は、沖縄戦のさなか、米軍が、住民を収容所に入れている間に、勝手に土地を接収してつくられたものです。無法に奪った土地は、無条件で返還するのが当たり前ではありませんか。
先の宜野湾市長選挙での地元紙による出口調査でも、普天間基地の辺野古「移設」に「反対」と答えた投票者が57%と多数でした。総理、米軍基地の「痛み」は他に移すのでなく取り除くべき――これが宜野湾市民を含めた「オール沖縄」の声だという認識はありますか。「オール沖縄」の声に背を向け、辺野古新基地を「唯一の解決策」などと言って、「県内たらい回し」に固執する政府の姿勢こそ、「普天間の固定化」をもたらしている元凶だという自覚はありますか。答弁を求めます。
貧困と格差の拡大――政治に解決する責任がある
総理は、自らの経済政策を「アベノミクス」と称し、「大企業が潤えば、やがてその恩恵が家計にも回る」と喧伝(けんでん)してきました。しかし、安倍政権の3年間で「アベノミクス」の破たんは明瞭です。
たしかに、大企業は2年連続で史上最高の利益をあげ、一握りの富裕層は株高で資産を増やしましたが、大多数の国民には、「アベノミクス」の恩恵が回ってきたという実感はありません。国民生活基礎調査でも、「生活が苦しい」と答えた人は62%にのぼり、年々増加しています。じっさい、働く人の実質賃金は、3年間でマイナス5%です。年収400万円の労働者でいえば、年間20万円も賃金が目減りしているのです。
こんなときに消費税を10%に引き上げたら、食料品などの税率を8%に据え置いたとしても、1世帯あたり年間6万2000円もの負担増となり、暮らしにも、経済にも、大打撃となることは明らかです。総理は、いま消費税増税が可能な環境にあると考えているのですか。
子ども、若い世代、介護――貧困の現実は政治が生み出した
とりわけ深刻なのは、日本社会のなかで、貧困と格差が広がっていることです。総理は、「子どもの貧困」をとりあげたわが党議員の質問に、「日本が貧困かといえば決してそんなことはない」「世界の標準から見てかなり裕福な国」と述べられました。総理、きちんと現実を直視し、国民が貧困に陥らず、貧困から抜け出せる対策を強めるべきです。
いま、全国各地で「子ども食堂」が生まれています。「十分な食事をとることができない」「毎日1人で夕ご飯を食べている」。そんな子どもたちを支えようと、ボランティアの方々が奮闘されています。総理は、この営みをどう評価されますか。また、政治が果たすべき役割はどこにあるとお考えですか。
家庭の経済状況と大学進学率の関係をみると、全世帯の子どもの現役大学進学率が73%であるのに対し、生活保護世帯の子どもは32%、児童養護施設の子どもの高校卒業後の進学率は23%と、大きな格差が生まれています。
にもかかわらず、安倍政権は、国立大学への運営費交付金を削り、その結果15年間で40万円もの学費の値上げを招こうとしています。これでは、経済的理由で進学をあきらめる子どもがますます増えてしまいます。奨学金を利用した学生が、卒業時に300万円〜500万円もの借金を背負う現状も放置されたままです。
学費の値下げ、すべての奨学金の無利子化、給付制奨学金と既卒者の奨学金返還減免制度の創設に踏み切り、子どもたちの学ぶ権利を保障することで、貧困の次世代への連鎖を断ち切るべきではありませんか。
働く若い世代に広がる貧困の解決も切実です。いま、若者の2人に1人が非正規雇用におかれ、低賃金で不安定な生活を余儀なくされています。そのことが、少子化の根本原因となっていることは、30歳〜34歳の男性の既婚率が、正規雇用では62%なのに対し、非正規雇用では25%であることからも明らかです。「好きな人ができても付き合ってほしいと言えない。僕と付き合っても幸せになれないから」という非正規雇用の男性の切ない声も聞きました。
労働者派遣法の大改悪を中止し、正規雇用を基本とした雇用のルールを確立し、若い世代の意欲と能力が生かされる社会をつくり、少子化問題を根本的に打開すべきではありませんか。
高齢者とその息子、娘が「介護難民」「介護離職」によって貧困に陥る問題も深刻です。昨年強行された介護報酬の史上最大規模の削減で、介護事業所の倒産が激増しています。介護施設に入れない高齢者、親の介護のために離職しなければならず低収入・無収入となったミドルエイジが、「共倒れ」の危険に直面しています。
総理、「介護離職ゼロ」を本気で推進するというのなら、介護報酬削減を撤回し、直ちに引き上げるべきではありませんか。
いずれの問題も、決して自然現象でも、自己責任でもありません。低賃金で不安定な非正規雇用の拡大、「正社員だから」という名のもとでの長時間労働、社会保障の連続改悪など、政治が生み出した問題であり、政治が解決する責任があると考えますが、総理の認識はいかがですか。
所得の低い人により重い負担となる消費税は、税率を上げれば上げるほど貧困と格差が拡大します。消費税10%への大増税はきっぱり中止し、「アベノミクス」で大もうけした大企業と富裕層に応分の負担を求める税制に改めることを求めます。
東日本大震災・原発事故5年――被災者支援を直ちに
住宅・生業再建がなければ被災者と地域の再建はできない
今年は東日本大震災から5年、阪神・淡路大震災から21年です。しかし、いまだに被災から立ち上がれない多くの人たちがいます。
阪神・淡路大震災の被災者は、避難所、仮設住宅から災害公営住宅へと移転を繰り返し、その都度、一からつくってきた隣近所のコミュニティーを壊されてきました。そのあげく終(つい)の住み家と思った災害公営住宅からも追い出されようとしています。神戸市長田地区では、被災者の声を無視して建てられ林立するビルが、商店街復興に大きな障害となっています。住宅の再建とともに地域コミュニティーの確保と生業(なりわい)の再建がなければ、被災者の生活再建と地域の再建ができない。このことが21年前の阪神・淡路大震災の重要な教訓ではないですか。
この教訓を東日本大震災の復興でも生かすべきです。被災者の住宅再建はこれからです。被災からまもなく5年がたつというのに、被災3県ではいまだに20万人近い人たちが避難生活を余儀なくされています。また、水産加工施設などができても、住民が戻れず人材が確保できなければ事業の再建はできません。人手を確保するためにも住宅の保障はどうしても必要です。被災者生活再建支援金を直ちに500万円に引き上げる、仮設住宅から移行するための家賃補助を実施する、こうした支援こそが復興をすすめる力となるのではありませんか。
原発事故避難は「ふるさと喪失」――再稼働は中止を
東京電力福島第1原発事故からも5年がたちます。避難指示が解除されても、戻りたいのに戻れないというのが実態です。原発事故は収束も解決もしていません。被害が実際に続いているにもかかわらず、東電による損害賠償を一方的に打ち切ることなど断じて許されません。福島県民に「ふるさとの喪失」という深刻な事態を強いたのが原発事故です。こんなことを二度と繰り返してはなりません。原発の再稼働は、いざという時に避難しなければならないことを前提にしています。ふるさと喪失が前提なのです。そんな話はもう通用しません。原発の再稼働は中止すること、福島第2原発の廃炉をすみやかに決断することを求めます。
国民の歩みはだれにも止められない――新しい政治を開くため全力
最後に、昨年の安保法制=戦争法の強行以来、多くの国民が、主権者として立ち上がり、声をあげ続けています。開始された国民の新しい歩みは、だれにも止めることはできません。必ず新しい政治を生み出す力となって働くでしょう。
日本共産党は、国民とともに、新しい政治を開くために、全力をあげる決意を表明して、質問を終わります。