2016年1月16日(土)
きょうの潮流
事故の一報を聞いて悲しみの過去がよみがえりました。1975年の元日、スキー客の送迎バスが長野・青木湖に転落。定員の2倍近い人数を乗せ、運転手がミラーを確認できない状態で急カーブで脱輪、24人が犠牲に▼10年後、日本福祉大の学生らを乗せたスキーバスが犀川(さいがわ)の笹平ダム湖に落ち、25人の命が失われました。スピードの出しすぎとともに、2週間連続で勤務していた運転手の過労が問題になりました▼〈湖底に沈める 若き命たちの尊き思い 悲しみを 二度とあらしめぬために〉。事故現場の追悼碑には惨事をくり返さぬ誓いが刻まれ、30年以上たった今も大学では追悼集会が毎年開かれています。その痛恨の願いを断ち切る事故がまたも▼ガードレールを突き破り、道路脇の斜面に大破したスキーバス。木に衝突し、くの字に折れ曲がった無残な姿が衝撃の大きさを物語ります。この30年で犠牲者が最多となった長野・軽井沢のバス事故。乗客のほとんどは10代、20代の若者でした▼原因はまだわかりませんが、見過ごせない情報も。予定のルートを外れていた、バスの運行会社は運転手の健康診断などを怠って行政処分を受けたばかり―。いずれも安全にかかわる重大なものです▼企画したツアー会社は「業界最安値」をうたっていました。安さと安全を天秤(てんびん)にかけるような風潮は一掃しなければ。日福大の構内には春、人生を突然絶たれた学生の無念の思いが宿る桜が咲きます。こんな悲桜を、これ以上増やさないためにも。