2016年1月14日(木)
きょうの潮流
イギリスの調査機関によると、いまだに50以上の国や地域が独裁政治体制にあるそうです。民主主義のレベルを5項目から比較したもので世界の4割近い人びとがそこで暮らしています▼手に入れた権力を握り続けるには基本的なルールがあるそうです。(1)盟友集団はできるだけ小さく(2)取り換えのきく者の集団はできるだけ大きく(3)歳入をコントロールせよ(4)盟友には忠誠を保つに足る分だけ見返りを(5)庶民の味方になるな―▼古今東西の独裁者と組織を研究した『独裁者のためのハンドブック』に詳しい。著者の政治学者は、独裁によって国民が被る苦難を終わらせるためにも、支配者が支配されるルールに習熟する必要があると▼思い通りに国を動かしていた老大統領がクーデターによって孫とともに逃避行する。羊飼いや旅芸人を装って逃げ続けるうち、みずからの圧政に苦しむ民の姿に接して己の罪深さを知ることに…。公開中の映画「独裁者と小さな孫」です▼映画は架空の国を舞台にした寓話(ぐうわ)。イランの巨匠モフセン・マフマルバフ監督は「どの国の人が見ても自分たちの国を見るような映画にしたかった」と話しています▼“独裁”の危険は身近なところにも。いま安倍政権は改憲の突破口として、戦前の戒厳令に等しい「緊急事態条項」を設けようと狙っています。政府の独断で「法」を定め、人権も抑圧できるという独裁国家そのものの中身。マフマルバフさんはいいます。「今こそ、この映画は日本で見られるべきだと思う」