2016年1月6日(水)
主張
憲法緊急事態条項
危険性直視し明文改憲許さぬ
憲法の解釈を変更する「解釈改憲」にとどまらず、憲法の条文そのものを変更する「明文改憲」に向けても意欲を示している安倍晋三政権のもとで、憲法に「緊急事態条項」を盛り込む動きが急浮上しています。「緊急事態」を口実に、首相の権限強化や国民の権利制限を狙った危険なものです。国民の反対が少ないところから改憲の実績を上げようという策略でもあります。大規模災害などの際に国会議員の任期を延長するなどを先行させる案も出ています。明文改憲の危険性を直視し、改憲を許さないたたかいが求められます。
「戒厳令」復活させる
憲法に緊急事態への対応を明記した条項がないことを理由に、緊急事態条項を創設しようという提案は、自民党だけでなく改憲勢力がこれまでも繰り返し持ち出してきたものです。改憲策動が進まない中で、特に安倍首相と自民党は、緊急事態条項を改憲の手始めにしようという姿勢を強めています。
日本共産党の志位和夫委員長は4日の党旗びらきでのあいさつで、「緊急事態条項」の「危険性はきわめて重大」であり、「それは改憲の本丸である憲法9条改定に向けた突破口であるというだけではありません」と指摘しました。
自民党は2012年に発表した改憲草案(「日本国憲法改正草案」)で、自衛隊を「国防軍」などとする案と並んで、「緊急事態」の章を新たに起こし、外部からの武力攻撃や内乱などの社会秩序の混乱、地震など大規模自然災害の際に首相が「緊急事態」を宣言する改憲案を持ち出しています。首相が緊急事態を宣言すれば、内閣が「法律と同一の効力を有する政令を制定することができる」とか、首相が「地方自治体の長に対して必要な指示をすることができる」ということを規定しており、文字通り「戒厳令」の復活です。
国民にたいしても「何人も(中略)国その他公の機関の指示に従わなければならない」と広範な私権制限を打ち出しており、議会制民主主義も国民の権利も破壊する危険な改憲案として、絶対に許されないものです。
自民党案が批判と警戒を呼んでいるため、最近は私権制限などとは切り離し、災害などの場合に国会議員の任期を延長する「特例」を設けることを優先する案も出ています。国会議員の任期は憲法で決まっているので、法律で任期を延長すれば憲法違反になるというのが口実です。しかし、国会議員の任期延長を認める緊急事態条項を設ければ、次は私権の制限もと、明文改憲が次々エスカレートする危険は濃厚です。緊急事態条項を持ち出した明文改憲の危険は、いささかも軽視できません。
憲法壊す動きを許さず
安倍政権はかつて憲法改正案の発議要件など改憲手続きを緩和する憲法96条の改定で明文改憲に道を開こうとしたこともあります。改憲への執念は根深く、しかも手段を選ばないしたたかなものです。
安倍首相は4日の年頭記者会見でも、ことしの参院選挙では「憲法改正」をしっかり訴え、国民的な議論を深めていきたいと主張しました。憲法9条の解釈を変更した戦争法具体化の動きとともに、緊急事態条項などを持ち出した明文改憲にも反対し、あらゆる憲法破壊を許さないことが急務です。