2015年12月29日(火)
老朽化進む高速道橋りょう
中日本で6割「30年超え」
笹子トンネル事故で問われる管理
高速道路の老朽化とずさんな点検が惨事を招いた中央自動車道笹子トンネルの天井板崩落事故(2012年12月)。本紙が高速道路の老朽化を調査したところ、10年後には、供用から30年を超える橋りょうが6〜7割にのぼることが高速道路3社への取材でわかりました。(矢野昌弘)
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22日の横浜地裁判決は、中日本の過失責任を認め、遺族ら12人へ4億4300万円の賠償を命じました。
“注意義務怠った”
同判決では、設置から35年が経過した「アンカーボルトの不具合への適切な点検を立案・設定すべき注意義務を怠った」と指摘しました。
本紙は、高速道路3社(中日本、東日本、西日本の各高速道路会社)に、管内にある構造物のうち供用から30年を超えるものの割合について聞きました(表参照)。
橋りょうは30年を経過すると損傷発生の割合が急激に高まるとされています。
中日本は、現時点でも「30年超え」が60%にのぼります。東日本と西日本は、30%台ですが、10年後には58%と70%と加速度的に増えています。
現在は「30年超え」の構造物が、10年後には「40年超え」することになります。高速道路の“超老朽化社会”の到来といえます。
また、本紙は3社に「点検の質・回数と、構造物の落下事故の発生は因果関係がありますか」と、認識を問いました。
これに対し「一概に論じることはできない」(中日本)などと回答。老朽化が加速していく中で、どのように利用者の安全を守っていくか、高速道路会社の姿勢が問われます。
安易な点検致命的
損害賠償訴訟の判決後の会見で、犠牲者の松本玲さんの父、邦夫さん(65)は「(重い天井板を)つり下げたら、落ちることを前提にした検査をしなければだめだ。単にマニュアルにそった検査、言い訳のような検査では事故は絶対に防げない。安易な点検、安易な建設をやっていたら、組織として致命的なことになるということが今回の判決で示された」と語りました。
笹子トンネル事故を受けて、道路法が昨年、改定されました。改定では、国や高速道路各社、自治体に5年に1度の目視による点検を義務づけました。
構造物の現状、過去の補修履歴などをふまえた適切な点検を求めた今回の判決。高速道の安全向上への転換点となることが期待されます。
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