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2015年12月27日(日)

安倍政権復帰から3年

「1強」というが…基盤ぜい弱 世論反発

「何でもあり」の暴走政治

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 26日で政権復帰から3年を迎えた安倍政権。「経済最優先」でスタートした同政権は、秘密保護法の強行(2013年12月)、集団的自衛権行使容認の「閣議決定」(14年7月)に続き、戦争法を強行成立(9月)させ、日本の政治に立憲主義破壊という異常事態をもたらしました。

 どんな政権であっても、憲法の枠内で政治を行うことが立憲主義の原則です。その原則さえも踏み越える安倍政権は、「法の支配」をないがしろにする独裁政治そのもの。近代以前に政治を逆戻りさせる暴走です。

予想を覆された

 沖縄県民の圧倒的民意と選挙での審判を無視して強行する名護市辺野古での米軍新基地建設。TPP(環太平洋連携協定)交渉では、重要5品目を「除外」するよう求めた国会決議も無視して「大筋合意」(10月)を押し付けようとしています。

 川内原発(鹿児島県薩摩川内市)の再稼働を強行(8月)したうえ、核保有国インドへの原発輸出に伴う日印原子力協定原則合意も強行しました(12月)。唯一の被爆国の首相として常軌を逸する行動です。

 マスメディア関係者から「核保有国との原子力協定はさすがにやらないと見込んでいた。予想を覆された。何でもありだ」という声があがります。

退潮傾向は歴然

 立憲主義破壊という異常事態をもたらした安倍暴走政治ですが、それでは強力な基盤を持つといえるのか―。

 安倍自民党は現在衆院で291議席をしめ、メディアは安倍自民党を「1強」などと報じます。しかし、14年末の総選挙で有権者全体に対する自民党の得票割合(絶対得票率)は17%にすぎません。

 そもそも自民党は歴史的に深刻な退潮のなかにあります。

 自民党結党直後の1958年総選挙の絶対得票率は44・17%。有権者の半数近くが投票していました。それが、現在では5人に1人の支持も得ていないのです。

 自民党が国民から退場を迫られた09年総選挙時の比例票(1881万票)を、その後の国政選挙で超えたことはありません。得票率でも惨敗した09年以下の状況です(表下)。退潮傾向は歴然としています。

 さらに、安倍政権が進めている戦争法や秘密保護法、原発再稼働、消費税増税、沖縄米軍新基地建設など主要政策には、世論の多数が反対の意思を示し続けています(表上)。地方を中心に食と農業を破壊するTPPにも強い反発があります。

 「これまで自民党は、相当多様な人材が党内で十分議論することができた。最近心配なのは、党内に十分な議論がない。(このままでは)支持はだんだん少なくなっていく」

 戦争法成立後、河野洋平・元自民党総裁は日本外国特派員協会での講演(10月)で、こう述べました。

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自民党の歴史的退潮―柔軟性失うモノカラー

 立憲主義破壊の暴挙に自民党内からほとんど批判の声はあがらず抑制する力もない―。

 河野洋平氏(元自民党総裁)は、その理由として、自ら導入に関わった小選挙区制をあげ、「これが悪かったという気持ちを持ち続けている」と講演で語りました。

 同じ党から1人しか立候補できない小選挙区制の導入で、党所属の国会議員は選挙の公認権などを握る党執行部の意向に沿うことしかできなくなったのです。「派閥」にかつての力もありません。

 自民党関係者の一人は、「自分の考えを言わない政治家が増えている。昨年の消費増税見送り解散に反対した税調の有力議員も、公認取り消しで脅されて、結局屈服させられた」と述べます。

 最近でも「軽減税率」導入をめぐり安倍晋三首相と党内の意見が“対立”したとき、増税派で「軽減」に慎重だった谷垣禎一幹事長が首相の意向に「屈服」(自民党議員)しました。「幹事長もかつてのような強い権限はない。『自民1強』というより『官邸1強』だ」(自民党関係者)といいます。

 政治学者の北岡伸一氏は著書『自民党 政権党の38年』のなかで、自民党内における派閥間競争の中で優位に立つために「派閥指導者たちは、国民の期待の発見と実現に力を入れた」と指摘しています。「(その結果)緩やかに国民の期待を吸収し、…国民の倦怠(けんたい)が爆発しない程度の政権交代を党内で行って、長期政権を維持した」としています。

 派閥間競争の中で、政策に一定の幅を持っていたからこそ、自民党は「強かった」という見方です。

 小選挙区効果によって自民党が虚構の多数議席を占めるもと、国民の批判に耳を傾けず、侵略戦争への反省を投げ捨て、立憲主義・民主主義の基本原理まで破壊する「アベ政治」に対し、反対の声も出せず「モノカラー(単色)」に沈み込む自民党。「強い」どころか批判を吸収する柔軟さを失って、世論から孤立を深めていく危機的状況にあります。

全国に広がりつつある 「野党は共闘」への期待

 政治的に脆弱(ぜいじゃく)で自らの政治的墓穴を掘るかのように、安倍政権の暴走は「憲法守れ」の巨大な人間の鎖を生み出しました。

 戦争法強行から3カ月。20日には「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合」(略称・市民連合)が結成されました。

 夏の市民運動の盛り上がりの中で「野党は共闘」という声が広がり、この声を受け止めて日本共産党が提案(9月19日)した、▽戦争法廃止の「国民連合政府」▽野党選挙協力の方針は、衝撃をもって受け止められ、波紋を広げました。

 「市民連合」は、安倍暴走ストップの政治的力を議会に打ち立てようと、来夏の参院選で32の1人区に野党共闘を求め、反対多数の世論を受け止める「受け皿」づくりを提起しました。

 23日には熊本で、弁護士の阿部広美さんが野党統一候補として出馬表明し、注目を集めています。戦争法反対の運動のリーダーの一人として地域で奮闘してきた阿部さん。県内50団体のネットワークを基礎に、日本共産党、民主党、維新の党、社民党、新社会党の野党5党が共闘体制を確認しました。

 こうした強力な市民運動を基礎とした野党共闘の動きは、さらに全国各地に広がりつつあります。これを「究極の談合」などとする与党幹部の攻撃が相次いでいますが、“恐れ”のあわれです。

 自民党関係者の一人は「自分たちの基盤がそれほど広くなく、野党が連合して有権者から受け皿として認められたら、意外に簡単にひっくり返る可能性があることを、執行部はわかっている。安倍政権の強さは民主党の弱さ、野党が連携できないことの裏返しだ」と述べます。

 (佐藤高志、中祖寅一、前野哲朗が担当しました)

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