2015年12月20日(日)
主張
大銀行の献金再開
借金の「棒引き」にもなる異常
みずほ銀行、三菱東京UFJ銀行、三井住友銀行など大銀行が相次いで自民党への政治献金を再開しようとしています。日本経済団体連合会(経団連)や全国銀行協会(全銀協)の呼びかけに率先してこたえたもので、財界の政治支配を一層強めるものです。かつては自民党の最大の資金源だった銀行業界は1990年代に経営が悪化、公的支援を受けるようになって以来献金を「自粛」しており、再開は18年ぶりです。献金をやめている間も大銀行は巨額の融資で自民党を支えており、再開される献金は借金を「棒引き」することになる点でも重大です。
巨額の融資で支え続ける
大銀行のうち、全銀協の会長行でもあるみずほ銀行(みずほフィナンシャルグループ)は、18日の取締役会で献金再開を正式に決定しました。年内に振り込まれるとみられる献金額は2000万円にのぼる見込みです。三菱東京UFJ銀行(三菱UFJフィナンシャルグループ)、三井住友銀行(三井住友フィナンシャルグループ)も献金を再開する見込みで、りそな銀行(りそなホールディングス)も追随の可能性があります。
メガバンク(巨大銀行)を先頭に銀行業界が献金を再開する理由は、経営再建のため支給された公的資金の返済が、りそなを最後に終わったためといわれます。献金はあくまでも「社会貢献」だといいます。大銀行をはじめ銀行業界は、安倍晋三政権のもとでの低金利、円安、株高の政策を背景に、預金者には低い利息を押しつけながら大もうけを続けています。法人税が連続して減税されるこのタイミングで献金再開を決めたのは、安倍政権の大企業本位の政策に一層影響力を強める狙いです。
銀行業界はかつて、電力や鉄鋼などの業界と並ぶ自民党の資金源でした。しかも、献金が停止した後も、大銀行を中心に自民党への巨額の融資を続けており自民党の財政を支えています。その金額は2014年の政治資金収支報告書によれば三菱東京UFJ31億6250万円、みずほ銀行20億7500万円、三井住友銀行20億7500万円、りそな銀行8750万円と総額74億円に上ります。
銀行業界の自民党への融資には担保がありません。自民党自体、資産として公表しているのは15億円余りの党本部の建物と総額で1億円ほどの自動車8台だけで、担保にするには大幅に不足します。確実な返済資金は企業献金と国民の税金で負担する政党助成金で、巨額の融資自体、国民には想像もできない大盤振る舞いです。
みずほ銀行の融資約20億円を1%の利率で計算すれば年間の利子だけで約2000万円になり、みずほ銀行が再開する献金額にほぼ匹敵します。銀行献金が事実上、借金の元金や金利の「棒引き」にあてられるのは全く異常です。
献金やめ預金者に還元を
もともと企業には選挙権がなく、営利が目的の企業献金は政治をゆがめる腐敗政治の元凶です。巨額の資金にものをいわせた企業の政治買収は主権者・国民の政治参加を妨げることになります。
大銀行は自民党への献金再開をやめ、企業・団体献金の全面禁止を実行すべきです。献金で借金を「棒引き」するぐらいなら、異常な低金利を改め、預金者や利用者にもっと還元すべきです。