2015年12月17日(木)
主張
「思いやり」増額
そこまで米国言いなりなのか
日米両政府は、2016〜20年度までの在日米軍への「思いやり予算」について約130億円増額の総額9465億円にすることで基本合意しました。両政府は、一部の「思いやり予算」の「根拠」としている原則5年ごとの特別協定が15年度末に期限を迎え、新たな協定を結ぶ必要があるとして予算規模について協議してきました。日本政府は当初、減額を提案したとされますが、増額を要求する米側に完全に屈した形です。「思いやり予算」は日米安保条約・地位協定上も負担義務のないものであり、米国言いなりの安倍晋三政権の異常な追従姿勢があらわです。
地位協定にさえ反する
「思いやり予算」は、▽米軍基地で働く日本人従業員の給与などの労務費▽米軍基地で使用される光熱水料▽米軍基地の施設整備費▽米空母艦載機の訓練移転費―を内容にしています。日米安保条約に基づき日本に駐留する米軍の法的地位などを定めた地位協定は、「日本国に合衆国軍隊を維持することに伴うすべての経費」について「日本国に負担をかけないで合衆国が負担する」と定めています(24条)。「思いやり予算」と特別協定は地位協定の規定に反しており、廃止が当然です。
「思いやり予算」については、財務相の諮問機関である財政制度等審議会が16年度予算編成に向けた建議(11月)でも抜本的な見直しを求めていました。
同建議は、軍事費(防衛関係費)の増額を容認しつつ、「思いやり予算」については「聖域視することなく見直しを行い、その縮減を図る必要がある」「(16年度以降の)新たな特別協定の締結交渉の中で、同経費の削減に取り組む必要がある」と主張していました。
同審議会に提出された資料によると、米軍を受け入れている国の米軍駐留経費全体に対する負担割合は、ドイツの約33%、イタリアの約41%に対して、日本は約75%にも達しています。ドイツやイタリアでは、労務費、光熱水料、施設整備費はすべて米側負担です。負担割合約40%の韓国も、光熱水料は米側負担となっています。
このため、資料は「他の米軍駐留国と比較して、日本の負担割合は大きい」とし、労務費、光熱水料、施設整備費などについて「廃止も含めた見直し」を提起していました。財務相の諮問機関でさえ、世界的に突出していることを認める日本の「思いやり予算」を削減するどころか増額するなど許せるはずがありません。
日本政府は当初、米軍が海外で起こす戦争に自衛隊を全面的に参戦させる戦争法の成立や、「在日米軍再編経費」などを含めた在日米軍関係経費の急増を「思いやり予算」減額の理由に挙げていたとされますが、すべて米側に拒否されました。
辺野古新基地の阻止を
「在日米軍再編経費」は、沖縄県民の意思に反した同県名護市辺野古への最新鋭基地の建設や、米空母艦載機部隊移駐に伴う岩国基地(山口県岩国市)の大増強などが含まれています。辺野古新基地建設の本格化などを許せば、16年度の再編経費は全体として15年度の1461億円を大きく上回るとされています。
米国の要求のままに、人(自衛隊)も、金も、基地も差し出すというのは主権放棄そのものです。