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2015年12月16日(水)

1億総活躍で賃上げ?

これまでもこれからも「賃下げ」政策

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 安倍政権は「1億総活躍社会」を目指す緊急対策で、「GDP(国内総生産)600兆円」の目標を掲げ、「最低賃金・賃金引き上げを通じた消費の喚起」を打ち出しています。その中身は―。


 アベノミクスの下で大企業は過去最高益を記録する一方、実質賃金は2年以上もマイナスが続き、プラスに転じても1%にも満たない状態です。正社員が減る一方で非正規雇用は増加し、年収200万円以下の「働く貧困層」は1100万人を超えています。“大企業がもうかればやがて国民にも回る”という「トリクルダウン」は破綻しています。

 その破綻を取り繕い、新たな装いで持ち出されたのが「1億総活躍社会」です。

 そこで最低賃金は「年率3%程度を目途として引き上げていく。全国加重平均1000円(時給)を目指す」としています。しかし、「1000円以上」というのは、2010年の政労使会議で20年までに「目指す」とされていたものです。実現するというのなら具体的道筋を示すべきですが、抜本的な中小企業支援も示されていません。

実質賃金増えず

 そもそも、3%の引き上げでは安倍内閣が目指す物価上昇率と同程度で実質賃金の増加にはなりません。“働く貧困”解消どころか内需拡大にもならないものです。

 しかも、賃上げのため企業に対しては「法人実効税率を早期に20%台に引き下げる道筋をつける」とし、税制改正大綱では現在の32・11%から2016年度に29・97%に引き下げるとしました。

 安倍政権はこれまでも「世界で一番企業が活動しやすい国」を掲げて法人税減税を行ってきました。しかし、賃上げには回らず、大企業の内部留保は300兆円を突破しています。いくら法人税を下げても内部留保としてため込まれ、労働者の賃上げにつながらないことは明らかです。

 さらに“1億総活躍”は「働き方改革等により、誰もが活躍できる環境づくり」として、若者や女性、高齢者を安価な労働力として活用することを打ち出しています。

 高齢者は「生涯現役社会」と称して「シルバー人材センター」の利用を拡大します。同センターは労働基準法も適用されず、無権利で安価な労働力として活用するねらいです。

正規雇用拡大を

 女性については、週20時間のパート労働者が労働時間を週5時間延長すれば、社会保険が適用されても手取り減にはならないとして非正規雇用の活用拡大を打ち出しています。

 経団連などは「500万人の雇用拡大」とぶちあげていますが、これでは新たな貧困層を拡大するだけです。

 さらに強調されているのが、「一人ひとりの労働生産性の向上」です。長時間労働を野放しにする「残業代ゼロ制度」の導入など労働法制の規制緩和による「生産性向上」をねらったものです。労働者は生産性向上のため際限のない長時間労働に駆り立てられることになります。

 安倍内閣がこれまでやってきたことも、これからやろうとしているのも「賃下げ」政策ばかりです。「賃上げ」をいうのなら、中小企業への支援と一体で最低賃金の大幅引き上げを行うことや、働くルールを確立して正規雇用を拡大するなど大企業の内部留保を労働者や下請け中小企業に回してこそ内需拡大の道が開かれます。 (藤原直)


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