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2015年12月15日(火)

官邸主導の選挙対策

「軽減」めぐり自民内混迷

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 「(首相)官邸主導の選挙対策だ」

 自民、公明両党が合意した消費税率の10%への増税に伴う軽減税率導入について、自民党議員の一人はこう述べます。“合意した”といっても、自民党内の議論は混迷しており、「党内では、『財政再建』と『社会保障財源の確保』の建前で進めてきた消費税増税の決定を、いまさら覆すような動きには疑問と抵抗が強い」(同党関係者)といいます。

説明できない

 民主党の野田政権と消費税の10%への増税で合意(2012年)した当事者の谷垣禎一幹事長はもともと、昨年の「10%増税先送り」にも「反対」だったし、今回の「軽減税率」導入にも「反対」だといいます。「1兆円とか1・3兆円の財源が必要だというが、どこから持ってくるのか説明もできない」として、自民党内の増税派は官邸の動きに“反発”。谷垣氏や宮沢洋一党税調会長に対しても、「官邸に抗議して辞任すべきだ」という声が出ています。

 自民党関係者の一人は、「谷垣幹事長は自分の意思にも反することから、二階(俊博)総務会長に党内の議論と官邸の主張の対立について対応を押し付け、責任の所在も全く不明確になっている」といいます。二階氏は13日、財源確保策を先送りしたことについて「財源を考えなければ何も始まらない。同時並行的にやっておくべきだった」と苦言を口にしました。

 「増税実施の2017年4月までに軽減品目の整理や技術的裏づけの整備が間に合うのかも全くわからない」「富裕層にも貧困層にも同じ『軽減』をかけることに合理的説明はない」

 自民党関係者の一人はこう述べ、あきれ顔を見せます。

妥協引き出す

 衆参ダブル選挙の可能性もちらつかせながら、「選挙で有利になるなら」と、議員心理に働きかけ、党内の妥協的気分を引き出すやり方だという指摘もあります。

 これに対し安倍晋三首相は14日、都内での講演で、自公両党の「軽減税率」協議が決着したことを受け、「税こそは政治そのものだ。民意を十分にくみながら協議をして最善の結果が出た」と誇ってみせました。

 しかし、自民党内の混迷が示すように「軽減税率」論議は、露骨な「選挙目当て」の欺瞞(ぎまん)にすぎません。

 すでに国民の多くは「10%増税を強行したうえで、一部で税率アップを据え置くだけなのにどこが軽減なのか?」「景気が悪いというなら増税そのものを中止すべきだ」と、「増税隠し」の議論に不信と怒りを広げつつあります。「軽減」と言ってあたかも税負担が軽くなるかのような錯覚を呼びおこしますが、実態は2%の増税分=5・4兆円のうち、1兆円を減税したとしても、4兆円を超える増税です。「長期政権」の思惑優先で、国民を愚弄(ぐろう)するやり方は破綻を免れません。

(中祖寅一)


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