2015年12月11日(金)
都教委の「君が代」強制 司法が断罪
高裁も再雇用拒否は違法
都に賠償命令 原告「画期的判決」
東京都立高校の元教員が、「君が代」斉唱時の不起立のみを理由に再雇用を拒否されたことは違憲であり、東京都と都教育委員会の「裁量権の逸脱・濫用(らんよう)」であるとして損害賠償を求めていた訴訟の控訴審の判決で、東京高裁(柴田寛之裁判長)は10日、一審判決を支持して都の控訴を棄却し、再雇用拒否は違法であり、採用された場合の1年間の賃金に相当する賠償(約5370万円)を都に命じました。
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判決では、都教委の再雇用拒否の判断について「客観的合理性及び社会的相当性を欠くもの」であり、裁量権の逸脱・濫用に当たると認め、都側の主張をすべて退けました。「君が代」斉唱時に起立を命じる本件職務命令について「思想及び良心の自由についての間接的な制約となる面があり…過大な不利益が課せられることになるとこれらの自由の侵害になり得るもの」と述べています。
同訴訟は2007年度〜09年度に採用を拒否された元教員25人が09年9月に提訴したもの。東京地裁は今年5月に、都教委による再雇用拒否の判断について「期待権を侵害」し、「裁量権の逸脱・濫用」であることを認め賠償を命じました。都は控訴していました。
判決後の記者会見で柿沼真利弁護士は、過去に同様の訴訟では高裁・最高裁で敗訴してきた経緯を説明し「完全敗訴が確定している状況をくつがえした、非常に画期的な判決だ」と語りました。
原告の永井栄俊さん(68)は「高齢者の採用拒否は教育現場にとどまらず、民間でも起きている重要な問題だ」と指摘。原告団代表の泉健二さん(69)は「司法が市民社会の成熟に向けて画期的な判断をくだしたのではないかと受け止めている」と話しました。
判決後、「日の丸・君が代」強制反対・再雇用拒否撤回を求める第2次原告団・弁護団は報告集会を開催。原告の渡辺和章さん(69)は「あまり政治的問題は関心ないほうでした。でも、処分を持ち出して強制する『10・23通達』にひどいと思いました。仲間と一緒にたたかってきてよかった。うれしい」と話しました。