2015年12月8日(火)
きょうの潮流
英国首相チャーチルが戦争の勝利を確信し、米国務次官補のアチソンが「これ以上の愚策は想像もできなかった」と語った日本の真珠湾攻撃。元外務省高官の孫崎享(うける)さんは自著『日米開戦の正体』で、当時の発言を引きながら「史上最悪の愚挙」を描いています▼日本を破滅へと加速させた「12・8」。それは、アジアで2000万人以上の犠牲者を出した、日本の戦争の終わりを告げる号砲でもありました▼「演習ではない。本当の空襲だ」。そのとき、ハワイのパールハーバーは日曜の朝を迎えていました。奇襲によって目覚めた街はパニックと化し、数多くの軍艦とともに民間人を含む2400人の命が奪われました▼同時に、アジア大陸の最南端でも戦端を開き、無謀な戦争を拡大していった日本。悲惨な末路は戦後70年の今年、改めて多くのメディアで取り上げられました。その一方で日本の戦争犯罪を問うものはほとんどありませんでした▼自国の戦争責任を徹底して追及し、いまやEU(欧州連合)の中心に座るドイツ。いまだに過去と向き合えず、近隣諸国から信頼を得られない日本。政治の姿勢が“加害者”としての罪をあいまいにしています▼「発言すべきことを発言できる社会を確保し、維持していく」。孫崎さんは真珠湾への道に突き進んでいった教訓をあげます。いま戦争法の廃止に立ち上がる若者や母親、そして多くの市民たち。彼らの声は、あの戦争によって傷つけられた人びとの苦しみや悲しみに寄り添っています。