2015年12月1日(火)
きょうの潮流
東京の夜空に「サクラセブンズ」の満開の笑顔が浮かびあがりました。初の五輪種目の7人制ラグビーで日本女子がリオの切符を手にしました。「新たな歴史をつくりたい」。彼女たちはこんな思いで予選を勝ち抜いてきました▼環境が整っていない女子。ラグビー人口は約3400人で大会も少ない。昨年から長期合宿で力をつけてきました。現在、休職し貯金を取り崩す選手、子育て中で合宿は“単身赴任”というママさんもいます▼女子ラグビーの始まりは19世紀後半かそれ以後といわれ、男子にやや遅れます。しかしその後、1970年代まで世界に広がらず空白の期間があります。日本の連盟設立も88年です。こうした系譜は女子サッカーと似ています▼サッカーは21年、発祥の地イングランドで女子「禁止令」が出ます。これが世界に広がり、半世紀も活躍の場が奪われてしまいます。「女性の体に有害」が表向きの理由。実際は「男子のグラウンドが足りなくなることと、女子の人気を恐れたから」。英国の研究者ジーン・ウィリアムズさんに教えられました▼禁止解除は、世界的に女性差別を見直し、社会進出を求める運動が広がった69年。女性スポーツはその権利獲得の歴史を刻み込んでいます▼打ち込める条件はいまだ十分ではありません。彼女たちの「歴史をつくる」気概は、ラグビーを愛し、重い扉をこじ開けてきた世界のラガーウーマンの「伝統」を受け継ぐもの。それをさらに前に進める“トライ”でもあるはずです。