2015年12月1日(火)
主張
共謀罪の導入
監視社会強める違憲立法ノー
「テロ対策」のために共謀罪の導入を求める発言が、自民党幹部や安倍晋三内閣の閣僚から相次いでいます。共謀罪導入を盛り込んだ「組織犯罪処罰法改定案」は2003年以降、国会に3度提出されましたが、いずれも廃案になりました。犯罪防止にならないばかりか国民の権利を侵害するとして、国民の反対が広がったためです。推進派は、過激組織ISのフランスなどでの無法なテロが続発したことを立法化の好機としています。国民のプライバシーと人権を侵し、監視社会を強める共謀罪の導入は絶対にやめるべきです。
警察国家への深刻な逆行
共謀罪導入を狙った組織犯罪処罰法改定案には、最高刑が懲役4年以上の犯罪(五百数十種)について、共謀をした場合は犯罪の実行がなくても処罰の対象とすることなどが書き込まれました。
国が犯罪者を罰することができるのは、犯罪行為が実際にあった場合に限られています。この場合は共謀者も処罰されますが、実行行為がなければ罰せられないというのが、近代刑法の大原則です。
仮に犯罪についていろいろ議論がされたとしても、言論の段階では実際にその人たちが犯罪行為に走るかどうかは断定できません。全く犯罪をする意思のない人まで議論の言葉尻がとらえられて「共謀」とみなされる恐れがあり、えん罪が多発する可能性があります。
まさに「内心」まで処罰の対象にする危険極まりないものです。
共謀罪ができれば、犯罪に関係のない一般の市民が警察に「怪しい」と特定されて監視対象とされる可能性が強まります。日常行動をスパイされたり、市民間の電話、電子メールなどが広く監視されたりする危険に巻き込まれてしまいます。共謀罪が罪刑法定主義に反し、国民のプライバシー権、言論・表現の自由、思想・信条の自由など、憲法の基本的人権を脅かすことは明白です。
安倍政権が一昨年に成立を強行し、1日に本格施行される秘密保護法ではすでに共謀の罪が導入されています。国民の「知る権利」のため重要な情報を内部告発しようと数人で相談したときなどが処罰の対象にされる恐れがあります。
10月からは、日本国内在住者すべてに共通番号を付けて情報管理を可能にするマイナンバー制度も始まっています。国会では盗聴法の改悪、司法取引制度の導入を盛り込んだ法案が継続審議になっています。ここに共謀罪が加われば、国民はいっそうの国家の監視の目にさらされることは明らかです。
国民相互の監視・密告を奨励する警察国家の道は、日本を「暗黒時代」に引き戻す逆流です。
危険をなくす努力こそ
戦争法の成立強行で、アメリカから対テロ軍事作戦への支援要請があったら、日本は法律上、支援可能になっています。日本国民がテロの標的にされる現実の危険はここにあります。テロ対策で必要なのは、国際社会が一致結束し、テロ組織への資金・人・武器の流入の遮断や、貧困・差別などテロの土壌をなくす努力などです。
国内対策では、警察行政や出入国管理行政の役割が重要です。テロ勢力の潜入を阻止し摘発する上で、その活動と体制の充実は必要ですが、「テロ対策」に便乗し、基本的人権を踏みにじる国民監視体制を強化することは許されません。