2015年11月29日(日)
辺野古代執行訴訟
訴権の乱用、違憲は明らか
県の答弁書・書面が批判
沖縄県の翁長雄志知事が名護市辺野古の米軍新基地建設の阻止のために埋め立て承認を取り消したことを不服として、国が県を提訴した辺野古代執行訴訟が12月2日、福岡高裁那覇支部(同県那覇市)で始まります。第1回口頭弁論を前に、国の訴状と県の答弁書・準備書面の提出で、双方の基本的な主張が出そろいました。
「法愚弄するもの」
県は答弁書で、国の提訴自体の不当性を糾弾しています。
地方自治法に基づく代執行手続きは、他に解決手段(今回の場合、新基地建設の再開)がない場合の最終手段として定められているにすぎません。ところが国は行政不服審査法を悪用して、沖縄防衛局長と国交相による審査請求・埋め立て承認取り消しの効力停止によって関連工事を再開しました。
この点について県の答弁書は、「国の立場を利用した自己完結的な違法手続き」を経た上での提訴であることを指摘。「法治主義の名の下に法を乱用してまで(沖縄の)民意を抑えつけようとしている」と述べ、訴訟自体が「訴権の乱用」だと却下を求めました。
高裁に対しても、「法の支配を実現することこそ裁判所の職責だ」と述べ、国(国交相)が国(防衛局)の言い分を聞くという審査請求・効力停止という違法行為を審理の対象とするよう要望しました。
一方、国側は訴状で、こうした“自作自演”手続きについて一切ふれていません。県側代理人の加藤裕弁護士は「法を愚弄(ぐろう)するものだ」(27日の会見)と批判しました。
新基地は不条理
また、県は第1準備書面で、県民世論に反して自治権の及ばない領域(=米軍新基地)を新たにつくることは「憲法92条の地方自治の本旨を侵害するもので、違憲だ」と指摘。県が新基地建設に関わって違憲性に言及するのは初めてといい、戦後70年経てなお基地返還が進まない沖縄に新基地を押し付ける不条理を批判するものです。
これに対し、国は辺野古新基地が累次の日米合意の「集大成」であり、翁長氏の取り消しで「米国との間の外交上、防衛上…の計測不能の不利益がもたらされ」るなどと強調。「知事が国防や外交に関する重大事項について判断する権限はない」とも述べ、露骨な安保最優先姿勢を示しています。
国側の新論点は
国側が新しく持ち出してきた論点が、1968年の最高裁判決です。同判決は、農業委員会が農地所有者の誤認があったとして買収・売り渡し計画を取り消したことに関わって出されたもの。取り消しの不利益と取り消さないことによる不利益を比べ、「公共の福祉の要請に照らし著しく不当」な場合のみ、行政庁は取り消しできるとしています。
国側は同判決を引用して、辺野古の埋め立てによる自然破壊などより、新基地を造らずに普天間基地(宜野湾市)を「固定化」することによる不利益が大きいなどと主張しています。
一方、県側は、同判決は処分の相手方が「国民」を前提としたもので、相手方が「国の機関」である今回の場合は適用できないと反論。同判決に照らしても、新基地を造らせないよりも造る不利益の方が大きく、埋め立て承認の取り消しは適法だと主張しています。
(池田晋)
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