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2015年11月27日(金)

郵政株の上場 どうみる

日本共産党衆院議員・国会議員団総務部会長 田村 貴昭さんに聞く

サービス後退の懸念  「全国一律」は不可欠

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 株式上場された郵政事業について、日本共産党の田村貴昭衆院議員・国会議員団総務部会長に聞きました。(聞き手・矢守一英)


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 ―上場でどのようなことが進められているのでしょうか。

 今回、郵政事業を束ねる日本郵政(持ち株会社)と、子会社3社のうち日本郵便を除く「ゆうちょ銀行」と「かんぽ生命保険」が株式上場しました。日本郵政は、政府が3分の1超の保有義務を有していますが、それを残し、できるだけ早期に売却することになっています。また、日本郵政が保有するゆうちょ銀行とかんぽ生命保険の株式は、2社の経営状況や日本郵便のユニバーサル(全国一律)サービスへの影響を考えながら、当面50%程度になるまで売却することになっています。今回3社の株式が上場され、今後も売却が段階的にすすめられていきます。

 政府や日本郵政は、株式上場で経営が改善され、活性化されていく利点を強調します。しかし、事業に与える影響が懸念されます。日本共産党は株式上場には反対してきました。

2社義務課さず

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(写真)日本郵政本社=東京・霞が関

 ―民営化はどのように進められてきたのでしょうか。

 郵政民営化は、小泉政権のもと「官から民へ」の象徴的な改革としてすすめられました。郵政民営化で郵便局の機能は、郵便局、郵便、ゆうちょ、かんぽにバラバラにされました。2007年に公社から日本郵政に移行。国民へのサービスの後退や混乱、利権問題などさまざまな問題も起こってきました。

 そのため、国民の懸念の声に押されて、12年の「改正」で、日本郵政には、「簡易な貯蓄、送金および債権債務の決済の役務」等の金融サービスの全国一律の提供義務が法律で規定されました。しかし、郵便局に、手数料を払って業務を委託している、ゆうちょ、かんぽの金融2社には法律上義務は課さないなど、大きな欠陥が残っています。

株主は収益評価

 ―金融サービスへの影響が心配ですね。

 その通りです。この20年で預金を取り扱う金融機関の店舗数は激減しています(グラフ)。都市銀行、地銀や信金・信組だけでなく農協や漁協の再編など、預金取扱金融機関の店舗が次々撤退してきました。「郵便局しか残っていない」自治体が全国で24まで広がっています。郵便局はますます、なくてはならない存在となっています。

 しかし、上場が進めば、株主から収益性の評価にさらされることになります。すでに投資家からはユニバーサルサービスのために郵便局が支払う「委託手数料が高すぎる」とか「重荷」などの声が聞かれ、「全国一律サービスにメスをいれるべき」などの主張も出てきています。国民へのサービス提供義務と真っ向から対立する議論が出ているということは重大です。

 ―そもそも郵政事業はどのような役割を果たしているのでしょうか。

 郵政事業は、郵便と金融サービスを提供する、国民生活にとってなくてはならない役割を果たしています。全国一律にすべての国民に提供されるユニバーサルサービスとして維持されることが欠かせないと考えます。

 郵便サービスでは、郵便をなるべく安い料金で、全国あまねく公平に届ける、他に代わることができない役割をもち、そのための義務づけもされています。ところが、上場前の先の国会では、郵便事業の範囲を定めて維持する仕組みとなっているのに、政府はその規制を緩和する「改正」をしました。日本共産党は「全国一律サービス維持基盤をほりくずす」と批判し、反対しました。民営化路線で郵便のユニバーサルサービスを切り崩す、こうした議論が続いていることは重大です。

 また、郵政事業は簡易な貯蓄、送金や債権債務の決済など、全国あまねく金融サービスをうけられる役割を果たしています。

 火山の噴火災害があった鹿児島県の口永良部(くちのえらぶ)島にも、郵便局があり(5月から一時閉鎖中)、郵政事業を担うとともに、その郵便局で働く方が地域で住民生活を支える、さまざまな役割を何役も果たしていることを聞きました。

 全国、津々浦々まではりめぐらされた郵便局のネットワークが地域でなくてはならない役割をはたしていることを実感しています。

民営化見直しを

 ―どのような課題が生まれているでしょうか。

 いまの法律の仕組みでは、ネットワーク維持のコストをだれが責任をもって負担していくのか、財源をどう確保していくのか、あいまいなままです。

 9月に出された総務省情報通信審議会の答申でも、赤字の郵便局エリアのコストを黒字の郵便局エリアで支えていることにふれながら、「国はユニバーサルサービス確保に向けた方策について検討することが必要」「国民・利用者が郵政事業に期待するサービスの範囲・水準の変化も踏まえて、ユニバーサルサービス方策やコスト負担の在り方について継続的に検討することが必要」と述べています。イギリスのネットワーク維持のための補助金やフランスの地方税の減免等、諸外国の事例にもふれています。

 海外でも民営化がすすむなかでさまざまな問題が生じています。民営化について根本から検証することが必要です。また、郵政事業にユニバーサルサービスを義務づけることをはじめ、民営化によって後退した郵政事業を再生するために、制度の見直しに着手すべきと考えます。

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