2015年11月20日(金)
大阪維新「市の生活保護費が減少」誇るが
「ルール違反」で支援抑制
橋下市長“憲法25条変えよ”
「62億円減 22年ぶりに減少!」―。大阪維新の会は大阪市長選(22日投票)で、生活保護費を減らしたことを、こう誇っています。困窮者の生活再建を支援する関係者は「橋下徹市長も『ルール違反があった』と認める減らし方に問題がある」と批判します。橋下「維新」市政下の生活保護行政はどのようなものだったのでしょうか。 (前田美咲)
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大阪市では、橋下市長就任後の2012年度〜13年度、全国の政令市で唯一、生活保護世帯数が減少しました。全国的には、受給者数が1・5%、受給世帯数が2・5%増えたなかでのことです。
同市の生活保護費の決算は、12年度に前年比22億円減と、22年ぶりに減少。以降、毎年減少し、11年度から14年度までに約62億円減っています。
これを「実績」と誇る大阪維新に対し、全大阪生活と健康を守る会連合会(大生連)の大口耕吉郎会長は「減らし方に問題がある」と憤ります。
13年、大正区の30代男性が生活保護を申請したところ、「週3回以上ハローワークへ行き、1社以上の面接を受けること」とする「助言指導書」が出されました。男性は血圧200と、働ける状態ではありませんでした。
大口氏は「保護開始前の申請者に指導するのは違法。医師の診察を受けさせ、保護を開始してから就労指導するのが本来の手順だ」と指摘します。
市の生活保護受給世帯の内訳をみると、65歳以上の「高齢世帯」が2531世帯増なのに対し、高齢世帯以外が3003世帯減っています(12〜13年度)。高齢世帯以外には、母子世帯や傷病世帯、16〜64歳の若年層が含まれます。
大口氏は「高齢世帯以外の減り幅は異常だ。生活保護は、利用者の『自立を助長する』のが大事な点。この点がないがしろにされている」と話します。
市がこの世帯を稼働年齢層(働ける層)と想定して「きわめて厳しい姿勢と強い方針でその抑制を図った」と分析するのは「大阪市生活保護行政問題全国調査団」(14年)です。法律家や学者・研究者、団体でつくる調査団は昨年、▽市独自のガイドラインを用いた申請時の稼働年齢層排除▽行き過ぎた扶養照会▽全区に複数配置された警察OBの役割▽人員不足、職員の資格取得率の低さといった体制の不備―などの実態を明らかにし、そうした「『大阪独自方式』は違法・不当」だとして市に改善を求めました。
橋下市長は後日、テレビ局の取材に「ルール違反があった」とする一方、「ルール自体を変えたい」「憲法25条の改正も必要」だと述べました。
調査団の普門大輔事務局長(弁護士)は「貧困層が増え、格差が拡大するなか、大阪維新の市政が続けば、憲法の定める生存権の保障が危うくなる」と警鐘を鳴らします。
大口氏は「現市政の態度は自治体本来の役割からほど遠い。橋下『維新』政治に終止符を打ち、住民の命と暮らしを最優先にする行政をつくろう」と呼びかけています。