2015年11月19日(木)
橋下維新 高校つぶし・学テ内申反映・「教育に穴」…
教育こわしもうごめん
大阪ダブル選 22日投票
最終盤に突入した大阪府知事・大阪市長ダブル選(22日投票)で「橋下維新の『教育こわし』はもうごめん」の声が広がっています。(小浜明代)
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「前回の選挙では維新を支持しました。でもいまは、子どもたちのことが全然わかっていない人たちだと思います。勉強が苦手だった子どもたちが先生の親身な援助で自信をつけ、成長して社会に出て行っています」。定員割れを理由に存廃の危機に立たされている府立西淀川高校(大阪市西淀川区)保護者の郡山麻理さんは、厳しいまなざしで語ります。松井一郎知事が「定員割れする学校は魅力がない。そこに通う子どもたちは成長しない」と子どもたちや保護者、学校関係者を深く傷つけたからです。
府と大阪市は18年度までに府立と市立の高校7校程度を廃止する計画で、昨年度と今年で府立の4校が廃止・再編整備の対象とされました。存続を求める署名は延べ7万人に上っています。同じく定員割れを理由に廃止が決まった咲洲(さきしま)高校(大阪市住之江区)保護者で、8年前の知事選で橋下氏を支持したという谷田香奈さんはいま、府内各地で維新政治の実態を訴えています。
「競争」と「強制」
高校つぶしは、橋下維新が進めてきた競争と強制、自己責任の教育の一環です。最たるものは、異常な学力学習状況調査対策です。
「教育は2万%強制」「競争がなければ勉強しない」「日本は自己責任の国。それがいやなら日本から出ていくしかない」と言い放つ橋下氏は知事時代、学力学習状況調査結果が全国最低クラスだったことをうけて「クソ教育委員会」とののしり、市町村別結果の公表を強要。大阪市では学校別結果も公表させました。
中学1、2年生への府独自の統一テストを実施し、今年の高校入試の直前に中学3年生の学力学習状況調査結果を内申点に反映させるとし、現場が混乱しました。内申点への反映は文科省から、実施要領に逸脱すると批判されています。
これだけではありません。進学実績の高い府立高校10校のみに特別に2億円、大阪市では「がんばる校長」に500万円、「がんばる教師」に100万円を特別に支給しています。その一方、教育効果が検証済みの35人以下学級は小学1、2年生のみで、全国の府県で同水準なのは他に2県だけです。
教育費600億円減
正規教員の採用を減らし続け、2014年度は定員枠7400人に対し採用は3000人。4400人が講師です。そのため産休や病休などのときに代替教員が来ない「教育に穴」という事態がまん延。府の教育費は7年間で約600億円減り、給料は全国最低。大阪への教員志望者がどんどん減っています。
こうした中で子どもたちはどうなっているか。小・中・高の暴力行為件数が昨年度1万件を超え、過去3年間連続全国1位。全国平均の2倍です。高校の不登校率、中退率ともに全国ワースト1(14年度)、小・中の不登校も全国20位(09年度)から6位(14年度)に急増しています。特に大阪市は橋下市長になって以降、12年度から2年間で小中の暴力行為が2倍、不登校が1・5倍に急増しています。
ダブル選ではこうした現状に校長や管理職から「もう維新はこりごり」「自民党はどうもと思っていたが、柳本あきらさん(市長候補)と、くりはら貴子さん(知事候補)の教育の訴えはとてもいい」との声が寄せられています。
まやかしの政治に終止符を
22日投票の大阪ダブル選では、大阪維新の会のウソとまやかしの政治にも終止符を打たなければなりません。
橋下徹大阪市長はいま、大阪の「暗黒の過去」として「自民党から共産党が手を組んだ8年前の政治」なるものを持ち出し、「あの昔のデタラメな政治に戻すのか。前に進めるのか」と叫んでいます。
しかし、大阪にいつ“自民共産の大阪府政や大阪市政の時代”があったというのでしょうか。まったくの作り話。詭弁(きべん)の類いです。
橋下氏が「暗黒政治」の象徴として取り上げるWTCビル(現・大阪府咲洲=さきしま=庁舎)などの無駄な大型開発は大半が前世紀中には完成していた事業です。当初から反対してきた日本共産党も、当時与党だった自民党などの会派も、いまでは「バブル期の政策の失敗」という認識で一致しています。
「暗黒の8年間」
ところが、その後も税金の無駄遣いを続けているのが2008年に府知事に就任した橋下氏です。知事時代には、「維新」の源流となる府議らとWTCビルの購入を強行。このときの騒動で自民党を飛び出した府議らが後に橋下氏を代表とする大阪維新の会を結成したのです。
橋下氏はWTC購入でいまも続く無駄な「二重庁舎」問題を引き起こす一方、後任の松井一郎知事とともに、大阪府の命や暮らし、中小企業支援などの予算を削りに削りました。
その結果、大阪では雇用者報酬も家計消費支出も府内総生産も全国以上に落ち込み、「1人当たり県民所得」は08年の5位が、12年の10位に転落しています。府の借金も増え、12年には新たな地方債発行に総務相の許可が必要な「起債許可団体」に転落しています。
いま大阪で問われているのは、まさにこうした橋下「維新」政治の「暗黒の8年間」です。
「維新」は「身を切る改革」を唱えます。しかし、実際には、相次ぐ政務活動費の不正使用、維新の党分裂をめぐる政党助成金の「分捕り合い」など税金へのたかりが鮮明です。知事の「退職金ゼロ」宣伝も実は収入総額348万円の増です。選挙のたびに「身を切る」と言って政治家としての「身分」を守り、切り捨てるのは府民の暮らしです。
審判下ったのに
「維新」自身の主張に照らしてもおかしいのは、5月の住民投票でノーの審判が下った「大阪都」構想を、「住民投票は1回限り」と断言してきた橋下氏が再び持ち出し、「反対多数なら民間人に戻る」と語っていた松井知事が公約に掲げていることです。
松井氏は「3年ほどかけてもう一度新しい設計図をつくりたい」と訴えますが、「都」構想が、大阪をダメにする大阪市廃止・分割政策であることには、変わりはありません。
橋下氏が持ち込んだ対立や分断、制度論に終始した住民投票前の大阪に戻すわけにはいきません。前に進めるというなら、いまこそ「維新」政治を終わらせて、市民・府民の声をしっかりと聞いてみんなで話し合う「オール大阪」の新しい政治へと進めるべきです。
(藤原直)