2015年11月19日(木)
戦争法成立2カ月 進む具体化、危険な動き
南シナ海問題に軍事的関与も
安倍政権による戦争法の強行成立(9月19日)から2カ月。日米両政府が、戦争法を実行する二つの新機関(同盟調整メカニズム・共同計画策定メカニズム)の運用を開始(3日)するなど、危険な動きが早くも始まっています。
「今度派遣される部隊については、新しい任務や活動を新たに付け加えることは考えていない」
中谷元・防衛相は13日の会見で、来春の施行を狙う戦争法の最初の適用となるはずだったアフリカ・南スーダン共和国での国連平和維持活動(PKO)に送る9次隊(中部方面隊)への任務拡大を見送る方針を示しました。
日本共産党の小池晃副委員長(参院議員)が入手した内部文書によると、同隊には、戦争法で可能になる「駆けつけ警護」(襲撃されている他国軍要員への加勢)などの任務付与が検討されていました。
中谷氏が戦争法の具体化について「慎重の上にも慎重を期して検討を行う」と強調するのも、来夏の参院選に向けて動きだした世論を恐れ、戦争法の動きを極力表面化させない作戦にでているからです。
中国「脅威」論利用
一方、安倍政権はこの1カ月、南シナ海問題に軍事的に関与する姿勢を強め、中国の「脅威」を国民向けの懐柔材料として利用しはじめています。
10月末に米軍が南沙諸島にある中国の人工島12カイリ以内にイージス駆逐艦を派遣する「航行の自由」作戦を開始すると、菅義偉官房長官はすぐさま「支持」を表明。安倍晋三首相は南シナ海での日米・多国間共同訓練の推進に加えて、「さまざまな選択肢を検討していきたい」(11月12日の参院予算委)と自衛隊の関与に前のめりの姿勢を示しました。
同じ海域では、海上自衛隊の護衛艦と米空母が共同訓練を実施。6日には中谷氏が南シナ海の要衝のベトナム・カムラン湾への海自艦の寄港を発表するなど、本格的な関与に向けた地ならしの動きが続いています。
米国と具体化先行
日米両政府が運用を開始した二つの新機関は、「調整」「計画」の名で日米の軍事行動を地球規模で具体化するもので、戦争法の施行によって初めて完全に機能します。安倍首相が4月に米国議会で戦争法の成立を「夏まで」と公約したのと同様、具体化でも米国を先行させるやり方です。
南シナ海問題一つをとってみても、自衛隊が平時からの「武器等防護」規定の適用によって、同海域で威嚇目的の共同訓練や米軍と一体のパトロール活動が可能になります。
戦争法による同海域への自衛隊関与は地域の軍事的緊張を高めるだけでなく、問題を複雑化させるもので、中国の一方的な現状変更の行為で正当化されるものではありません。(池田晋)
戦争法の具体化をめぐる最近の動き
10月27日 米軍が南シナ海で「航行の自由」作戦開始
10月28日 官房長官が米軍の南シナ海作戦に「支持」表明
10月末 日米の艦船が南シナ海で共同訓練
11月3日 日米政府が新同盟機関を運用開始
11月4日 首相が米軍トップに南シナ海作戦の支持伝達
11月6日 防衛相が海自艦のベトナム軍港への寄港を発表
11月12日 首相が国会で南シナ海への自衛隊関与について「さまざまな選択肢を検討」と答弁
11月13日 南スーダン9次隊への新任務先送りを防衛相が明言