2015年11月15日(日)
きょうの潮流
世界で最も美しい通りといわれるパリのシャンゼリゼ通り。世界中から集う人々で華やぐこの通りを、「反テロ」の声が埋め尽くしたのは年明けでした▼フランスの風刺週刊紙「シャルリエブド」が襲撃された事件。テロへの非難とともに表現の自由を守る「私はシャルリ」は瞬く間に仏全土にひろがりました。かつてのパリ解放やサッカーW杯優勝のときを上回る人数のデモには欧州の首脳らも連帯しました▼フランスの象徴「自由、平等、博愛」が改めて問われてから10カ月、またもテロがパリを襲いました。劇場やレストラン、サッカー場…。週末でにぎわう市内は無差別テロによって恐怖や悲鳴に包まれ、自爆や銃の乱射で120人をこえる死者が出ています▼爆発があったサッカー場で試合を観戦していたオランド大統領は「前例のないテロが起きた」として非常事態を宣言し、国境の封鎖を命じました▼罪のない市民を標的にする卑劣さ。その不安はいまや世界中にまん延しています。いくら警戒しても、すり抜けていく暴力や破壊の影。国境の壁が低くなるほどテロの脅威が増す現代社会。いびつな姿はどうやってつくられたのか▼あの掛け声がこだましたとき、一方で「私はシャルリではない」との動きも。暴力の連鎖を断ち切り、貧困や差別といった人間の憎悪をかきたてる温床に目を向けないかぎり、テロをなくすことはできません。「楽園」という意味があるシャンゼリゼ。それが一部に偏る世界を変えていく努力も必要です。