2015年11月14日(土)
きょうの潮流
得意なことは仕事をさぼり、お金をたくさん使うこと。特技もあるけど、うまくいったためしがない。生まれつき病弱で、おもらしすると火事になる―。もんじゅ君の履歴書です▼高速増殖炉「もんじゅ」の非公式のゆるキャラです。福島第1原発の事故後にツイッターでつぶやき始め、フォロワーは10万人も。知恵をつかさどる文殊菩薩(もんじゅぼさつ)と原子炉をモチーフにした、もんじゅ君の希望は「早く廃炉になりたい」▼事故やトラブル続きの「もんじゅ」について、原子力規制委員会が運営主体を変えるよう所管の文科相に勧告しました。これまで担ってきた原子力機構は「ふさわしい安全確保能力をもつとは考えられない」と▼あのぬるい審査で批判されている規制委が言うのですから相当です。実際、「もんじゅ」は運転を始めた翌年にナトリウムが漏れて火災・爆発する大事故を起こし、以来20年間も停止状態。再開しようとしてもミスや1万件もの点検漏れが発覚するお粗末さです▼これまで1兆円以上を費やし、いまも1日5千万円もかかる究極のムダ遣い。危険性や巨額の投資で他国が手を引いているのに、いまだに安倍政権は「夢の原子炉」にしがみついています▼もんじゅ君には、2050年の自分を想像した夢があります。隠居して美しい若狭(わかさ)湾を眺める日々。何よりも変わったのは、変だなと思ったら声を上げる人たちが増え、風通しのよい社会になったこと。海と大地と風がよごされることなく、ずっとずっと未来まで続く世界です。