2015年11月8日(日)
「国民連合政府」構想 志位委員長、大いに語る
“共産党本気 安倍政権打倒します”
テレビ東京系「週刊ニュース新書」
日本共産党が提案している「戦争法(安保法制)廃止の国民連合政府」構想をテーマに取り上げ、志位和夫委員長がジャーナリストの田勢康弘氏の質問に答えた7日放映のテレビ東京系番組「週刊ニュース新書」。「共産党の本気 安倍&橋下打倒します」のテロップが掲げられ、ビデオ映像も交えながら、志位氏は縦横に語りました。司会は、繁田美貴、小島秀公の両アナウンサーです。
戦争法――内容もやり方も二重の憲法違反、廃止しかない
番組冒頭、「志位委員長の本音に迫りたい」と○×形式で六つの質問。(1)「国民連合政府」構想で安倍政権を打倒できる?(2)この構想が実現したら、共産党も閣内に入る?(3)民主党にある共産党アレルギーを払拭(ふっしょく)できる?(4)共産党は大阪ダブル選(府知事選・大阪市長選)で自民党が推薦する候補を支援しますが、自民党との連携に矛盾はない?(5)日米安保を破棄し、自衛隊を解散しても、日本は安全だと思う?(6)委員長に就任して15年、そろそろ趣味のピアノに没頭したい?―というもの。志位氏は(1)(3)(4)に「○」、(2)(5)に「△(どちらでもない、○×両方の札を挙げる)」、(6)に「×」を挙げ、この答えなどを中心にインタビューが進みました。
田勢氏が「共産党は安倍政権のどこが一番問題だと考えていますか」と質問しました。志位氏は次のように答え、やりとりに。
志位 やはり最大の問題は、国民の多数の声を踏みつけにして安保法=戦争法を強行したと、ここにあると思っています。この法律ばかりは、成立させられたからといって、そのままにしておくことはできないと(思います)。
まず、内容の面で、憲法9条を蹂躙(じゅうりん)して、自衛隊の海外での武力行使のさまざまな仕掛けが盛り込まれています。さらに、やり方の面で、政府が、戦後60年あまり、「集団的自衛権行使は憲法9条のもとではできない」といってきた憲法解釈を一内閣の専断でひっくり返す、立憲主義を破壊するというやり方をとった。内容も、やり方も、これは二重に憲法違反で、これは廃止するしかないと考えています。
自分の頭で考え、自分の言葉で語り、自分の足で行動する――強行後も運動が広がる
田勢 おそらく、そうした安保関連の議論をあんまりしたくないという気持ちが、臨時国会をやらないとか、そういうことにつながったんだと思いますが、こういう国民の半数以上の人の反対の声を、どうやってこれからつなぎとめていくかというのは、これは非常に重要なことだと思います。
志位 私が、非常に心強く思っているのは、安保法=戦争法が強行された、それによって、国民のたたかいが止まったわけじゃないんですね。さらに大きく発展している。
いま起こっている国民のたたかいというのは、60年安保(条約改定反対闘争)のときは労組などの動員が中心だったと聞きますが、それと違うんですね。国民一人ひとりが、主権者として、自分の頭で考え、自分の言葉で語り、自分の足で行動する、そういう運動がずーっと広がっていますから、強行されたあとも、さらに運動が広がるという状況があります。
「総がかり行動実行委員会」のみなさんが、シールズ(SEALDs)のみなさんや「ママの会」の方々などともいっしょになって、29団体(の共同のよびかけ)で、来年の5月3日までに2000万以上の戦争法廃止の署名をとろうということで、いま取り組んでいますが、ぜひこれを成功させたいと思います。
そういう運動がずーっと続いていますから、今度ばかりは、安倍さんは「経済最優先」といえば忘れてくれるだろうと、ある自民党の議員は、「国民は正月の餅を食ったら忘れる」といっていますが、そうはならない。絶対に、これは、政治を変える大きな流れになると考えています。
大阪の同時選――民主主義と住民自治を取り戻す大義あるたたかい
22日投票の大阪府知事選・大阪市長選での共産党の対応が話題に。「(おおさか維新の会の)橋下(大阪市長)さんは『自民党と共産党は政策や理念が違うので、当選した後のことをどうするのか、自共連携は大阪市民や府民のためにならない』といっていますが」(繁田氏)との質問に志位氏が答えました。
志位 これは、「おおさか維新」による民主主義と住民自治の破壊というのは、他の県にはみられない異質のものだと、異質の危険があるものだというふうに、私たちは考えております。
たとえば、大阪市の3万人の市の職員全員を対象にして憲法違反の「思想調査」を行う。あるいは、大阪市を廃止・解体する「都構想」、これを住民投票で否決されても、また持ち出してくる。これは住民自治を壊すものですね。
ですから、私たちは、今度の選挙で「おおさか維新政治に終止符を、大阪の民主主義と住民自治を取り戻そう」、この一点で、他の政党・団体・個人と力をあわせてたたかっているわけで、これは大義のあるたたかいだと思います。まず、住民自治と民主主義を取り戻す。この民主主義をきちんと取り戻せば、この土俵の上で、いろんな政策の議論はやっていけばいい。
そして、お二人(くりはら貴子大阪府知事候補、柳本あきら大阪市長候補)が掲げている政策の内容をみますと、子どもさんの医療費(助成制度の拡充)の問題とか、あるいは中小企業の振興の問題とか、いろいろな点で前向きな一致点がでてきています。ぜひこれは実現をしたいし、それから、意見が違うものは、議論していくという対応をしていきますから、これはしっかりとした、本当にまっとうな大阪の地方自治がよみがえることになると思っています。
「他地域と違う事情がある」(田勢氏)
「最優先の大義での協力は矛盾でも何でもない」(志位氏)
志位氏が、番組冒頭の○×形式の質問で、大阪ダブル選での自共連携には矛盾がないことに「○」を挙げたことについて、田勢氏は「大阪はやっぱり、委員長がおっしゃるように、ちょっとほかの地域とまったく違う。いろいろ事情は。これまでの歴史も相当違いますので」とコメント。これを受けて志位氏は―。
志位 やっぱりその地域には、最優先で解決すべき問題があると思うんですよ。大阪でいったら、さきほどいった民主主義と住民自治を取り戻すと、これは最優先だと思うんですね。ですから、その最優先の大義で、いろんな協力をやるのは、これは矛盾でもなんでもないと思っています。
繁田 国政では自民党と対立している、対峙(たいじ)している状態ですが、共産党は安倍さんよりも橋下さんのほうに脅威を感じているということなんでしょうか。
志位 大阪についていいますと、「おおさか維新」の政治というのは、自民党だ共産党だといっていられない、それだけ危ないということですね。
立憲主義・民主主義取り戻すため「どうしても政府が必要」
番組では、「国民連合政府」構想の三つの柱をフリップで紹介。志位氏はその意義と内容について語りました。
志位 私たちが、なぜ「国民連合政府」という政府の提唱をしたかといいますと、戦争法=安保法を廃止して、本当に日本の政治に立憲主義、民主主義を取り戻そうとすれば、どうしても政府が必要になるということからなんです。
戦争法=安保法の廃止自体は、廃止に賛成する勢力が衆議院と参議院で多数を占めて、廃止法案を提出して可決すれば可能です。しかし、それだけでは問題は解決しないんです。それをやっても昨年の7月1日の集団的自衛権行使容認の「閣議決定」が残ります。この「閣議決定」が残るかぎり、憲法に反した自衛隊の海外派兵の火種が残ってしまい、立憲主義を壊したでたらめな憲法解釈が続きます。ですから、どうしても「閣議決定」の撤回までやらないと問題は解決しない。
戦争法=安保法の廃止、「閣議決定」の撤回、この二つの仕事をしっかりやろうとすれば、どうしても政府が必要になるのではないか。そして、その政府をつくるために選挙協力をやろうじゃないかという提案です。
田勢 政府をつくって、安倍政権がやった「閣議決定」を元に戻そうということですか。
志位 そうです。
“壁”は越えられないが、“ハードル”は越えられる
日本共産党の「国民連合政府」構想をめぐる他の野党の反応をどう受け止めるか―。小島氏は「小沢(一郎)代表の生活の党と社民党は賛同しているなかで、野党第1党の民主党は慎重な構えをみせています。細野(豪志)政調会長は『共産党とは協力すべきでない』と明言し、岡田(克也)代表も、選挙協力は『国民連合政府』構想の『撤回』が前提になるとの考えを示しています。岡田代表が求める『連合政府』構想『撤回』に応じる構えがあるのか、それとも、あくまで、この構想に賛同することが選挙協力の条件になっていくのですか」と質問しました。
志位 岡田さんのご発言で、私たちに対して、「(国民連合)政府」構想の撤回を求めてはおられないと思うんです。よく(発言録を)拝見していますが、岡田さんのおっしゃっていることは、それが「条件」だと「ハードルが高い」のではないか、ということをおっしゃっているので、ここはよく話し合ってみたいと思っています。
岡田さんのご発言のなかで、“共産党との選挙協力は必要だ”というのは大事な一致点だと思うんです。ただ、(日本共産党との連立)政権の問題については“ハードル”が高いともおっしゃっている。ただ、“ハードル”は“壁”ではないですね。“壁”は越えられませんが、“ハードル”は越えられますから、そこは、よく話し合ってみたい。そして、私たちの「提案」にいろいろなご意見やご提案があれば、よくお聞きして、話し合いたいと思っています。
党として初の試みであり、先方にも事情がある――信頼感をもって話し合っていく
さらに繁田氏は「話し合った結果、選挙協力のために『国民連合政府』をなくす(取り下げる)ことはありえますか」と質問。志位氏は次のように答え、やりとりに。
志位 私たちとしては、先ほどいった理由で、本気になって戦争法=安保法を廃止して、立憲主義・民主主義を回復しようと思えば、「国民連合政府」がどうしても必要だと考えています。それから、選挙で本気になって野党が勝とうとすれば、「国民的大義」を野党がガーンと掲げないと、自公に勝てないと思うんです。
田勢 私も、この問題で岡田さんと話しましたが、岡田さんは、共産党がこの構想を撤回することが前提条件だというようなことは一切考えていないと思います。話し合いのなかで、どうやれば安倍政権と対峙できる勢力をまとめられるかと、まず考えていると思います。ただ、民主党のなかにもいろんな考えの人がいますから、そのことをいろいろ配慮していわれることは、いろいろあるんだろうと思います。
志位 やっぱり初めての試みですし、先方にもいろんな事情があるでしょう。私たちも、実は、こういうことをやるのは初めてなんです。選挙協力を全国的にやろうというのは、結党以来初めてなんですから、私たちにも不慣れな面もあるかもしれません。ですから、多少、長い目でみていただけるとありがたい。双方が協力して、誠意と信頼感をもって、岡田さんと話し合っていきたいと思っています。
安保廃棄を「国民連合政府」には求めない――日本有事には従来の条約・法律で対応
○×形式の質問にあった「民主党の共産アレルギーを払拭できる?」がテーマに。民主党内に「革命をうたっている政党といっしょに政権をとれるか。やはりハードルがあまりにも高い」(蓮舫代表代行)などの会見映像が流れました。
一方で、憲法学者の小林節・慶大名誉教授の次のようなコメントも映像で紹介されました。
小林 (国民連合政府構想に)個人的には大歓迎です。野党が一つにまとまれば十分勝てる。参議院選挙でも勝って、衆議院選挙でも勝つ。政権交代すれば、今回の乱暴な閣議決定も、乱暴な戦争法も廃止できるじゃないですか。他の党が許しませんよ。非武装中立なんてのは。絵空事ですから。でも、彼ら(共産党)が夢をもっているのはいいじゃないですか。同時に、政権に入れて現実を知ったときに共産党が変わる可能性も否定しちゃいけないと思うんですよ。だって、頑固に全選挙区に立ててきた共産党は、党議決定して選挙協力するって言い出したわけでしょ。変わったんですよ、共産党が。この1〜2年の論争の中で共産党が変わる可能性も、他の党は認めて期待してあげなければいけないんですよ。
小島 共産党は、今回のこの「国民連合政府」構想を実現したら、基本政策の日米安保条約の廃棄と自衛隊の解消を一時的に棚上げするとしています。さきほど小林さんもおっしゃっていましたが、今回の選挙協力のように各党は共産党が変わる可能性を否定してはいけないと話していました。どうですか、志位さん、今後ですね、この基本政策、二つを完全に捨てるようなことも考えたりするんですか。
志位 私たちは、日米安保条約を廃棄するという大方針、それから自衛隊は、日米安保条約を廃棄した新しい日本が平和外交をやるなかで、国民合意で一歩一歩、解消に向かっての前進をはかろうという大方針は堅持していきたいと思っています。ただ、その方針を「国民連合政府」に求めるということはしない。これをしたら他の党と一致にならない。そういう点では方針を「凍結」する。
ですから、「国民連合政府」の対応としては、安保条約にかかわる問題は「凍結」する。すなわち戦争法の廃止は前提にして、これまでの(戦争法成立前の)条約と法律の枠内で対応する。現状からの改悪はやらない。「廃棄」に向かっての措置もとらない。現状維持ということですね。これできちんと対応する。
ですから、仮に日本有事が起こった場合などは、これまでの条約や法律の枠内で行動するということです。そこまで含めて、私たちは、「連合政府」としてはそういう対応をするということをはっきりさせております。
現実の危険――中東・アフリカに自衛隊が行って一緒に戦争すること
戦争法の危険に関して、田勢氏は「安倍政権・与党側の言い分は、中国の海洋進出とか、核武装しつつある北朝鮮とか。軍事的な情勢が変わってきており、それに対抗するためだとずっと言っているんです。だけど、どう考えてみても、あの大国中国がアメリカと戦争する気があるとは全く思えない。北朝鮮も一緒で、もしアメリカとことを構えるつもりならば、もうとっくにやっていると思うんです。だとすれば、アメリカが現実のものとしていま一番恐れているのは、(過激組織)ISだと思うんです」と指摘。「ISとアメリカが軍事衝突するときに、日本が協力を求められたら、日本の国会、あるいは内閣は毅然(きぜん)とノーと言えるか。そこには大変な不安を感じているんです」と語りました。志位氏はつぎのように応じました。
志位 本当ですね。実際、(安保)法制=戦争法の一番の具体的危険がどこにあるかといえば、ISに対し米軍が軍事的行動をさらにエスカレートさせたとき、日本(の自衛隊)が兵站(へいたん)で支援する――実態上は戦争に協力していく(ことになる)。対IS作戦を日本政府も否定していません。
それから、アフガニスタンにいま米軍が展開しています。「治安活動」という名目ですが、実際は戦争です。アフガニスタンに展開している「治安支援部隊」のような活動に(自衛隊が)参加する可能性があるのかと聞いたら、(安倍晋三)総理は否定しない。ですから、実際の危険はアフガニスタンであり、ISであり、あるいは南スーダンのPKO(国連平和維持活動)の任務の拡大――こういうところに実際は危ないところはあるわけです。
ですから、実際の危険は、北朝鮮の問題、中国の問題にリアルな(戦争の)危険があるのではなくて、実際の危険は、中東、アフリカの方にまで自衛隊が出て行って、一緒に戦争をやる、ここにあると思うんです。
繁田 質問の2番目「(国民連合政府)構想が実現したら共産党も閣内に入るのか」にちょっと悩まれて「△」にしましたが、なぜですか。
志位 私たちの「提案」では、「国民連合政府」ができた場合、閣内協力か閣外協力かという条件はあらかじめつけてないんです。ですから、いろんな選択肢がありうる。そのときの状況に即して、ベストの選択をとるということになると思います。
最後に番組のアイドルネコの「にゃーにゃ」に話が及び、志位氏は、新婚時代に5匹のネコを飼っていたこと、ネコを見るとどうしてくつろいだ感じになるのかなどについて語り、和やかな雰囲気のなかで番組は終了しました。
大変分かりやすい
視聴者から反響
日本共産党の志位和夫委員長が7日に出演した「田勢康弘の週刊ニュース新書」の放送後、党本部に視聴者から感想が寄せられました。
東京都の男性は「『国民連合政府』の話は、大変分かりやすく、良かった。これからも憲法と民主主義を大事にしてほしい」と語りました。高齢の女性は「志位さんは丁寧に説明されて、聞きやすかった」と話しました。