2015年11月6日(金)
きょうの潮流
米中両国が戦争開始? 刺激的な見出しの夕刊紙・週刊誌を目にします。中国や東南アジア諸国の係争地である南シナ海・南沙諸島で中国が建設している人工島の12カイリ(約22キロ)以内で、先月27日、米海軍イージス艦ラッセンが航行したことによるものです▼もちろん米軍が艦船1隻で戦争することはありえないし、米中ともに戦争する意思もありません。ただ、地域の緊張を高める行動の自制が求められます▼中国は領有をめぐる紛争があるところで岩礁を埋め立てて人工島を建設していますが、一方的な現状変更であり、事態を複雑化するものです。満潮時に水没する岩礁を埋め立てても国際法上、周囲は領海とはみなされません▼米国は「航行の自由」作戦と称して、イージス艦を人工島から12カイリ内で航行させましたが、これも「軍事対軍事」の悪循環を生みかねません。関係各国は南シナ海行動宣言(DOC)で平和的解決を誓約しており、米国もこれを支持しています▼気になるのは、米側が長期にわたって南シナ海に艦船を派遣すると表明したことです。ラッセンは横須賀基地配備の艦船です。米海軍は横須賀に3隻のイージス艦を追加し、大増強をする計画です。緊張の震源地にしてはなりません▼安倍政権は米軍の作戦をただちに支持するとともに、南シナ海への自衛隊派兵の可能性まで示唆しました。米国も日本も、南シナ海の領有権をめぐる紛争の当事者ではありません。やるべきは、平和的解決を後押しするための外交努力です。