2015年11月4日(水)
辺野古「本体工事」強行したが…
埋め立てまで多くのハードル
翁長知事と稲嶺市長支えて 新基地阻止は可能
安倍政権は10月29日、沖縄県名護市辺野古の米軍新基地建設に伴う「公有水面埋め立て事業」=いわゆる本体工事に着工しました。新基地ノーの圧倒的な県民世論を無視した暴挙です。ただ、真の本体工事である、辺野古海域の埋め立てまでには多くのハードルがあります。 (竹下岳)
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「着工詐欺」と
中谷元・防衛相は同日の会見で、陸上部分の作業である仮設ヤード、仮設道路から着手する考えを示しました。このうち、作業に着手しているのは辺野古崎突端に設けられる作業ヤード(資材置き場)の整備です。
ただ、現在行われているのは、ヤード建設のための整地にすぎず、実際に作業する業者の契約は12月からです。厳密にいえば本体工事はこの時点から始まります。本体工事の「着工詐欺」という声もあがっています。
文化財の調査
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作業用車両が利用する仮設道路については、名護市の文化財調査(来年2月末まで)が終了するまでは着手できません。市の調査については、米軍も立ち入りを認めており、すでに6月から始まっています。
設計変更承認
辺野古の埋め立て計画(沖縄防衛局)に変更が生じた場合、公有水面埋立法に基づいて都道府県知事の承認を得る必要があります。岩国基地(山口県)の滑走路沖合移設の場合、8回の変更申請がなされ、その都度、知事が承認しています。沖縄では翁長雄志(おなが・たけし)知事が承認することはあり得ないため、政府はその都度、障害にぶつかることになります。
埋め立て土砂
沖縄防衛局は昨年末、仲井真弘多(なかいま・ひろかず)前知事の退任直前に4件の変更申請を行いましたが、埋め立て推進派の仲井真氏でさえ、承認したのは2件だけです。
残る2件のうち、不承認となったのは埋め立て土砂の搬入方法です。防衛局は当初、辺野古沖に近い辺野古ダム周辺を切り開き、土砂をベルトコンベヤーで運ぶ計画でした。しかし、新基地阻止を掲げる名護市の管理区域にかかるため、不可能と判断。ダンプカーで輸送する計画に切り替えましたが、不承認になりました。
沖縄防衛局は土砂の大半を県外から調達することを余儀なくされましたが、特定外来生物の流入などを防ぐための県の土砂規制条例が1日、施行されました。
水路切り替え
残る1件の変更申請は今年1月、防衛局が自ら取り下げました。これは、キャンプ・シュワブを通って海に注いでいる美謝(みじゃ)川の水路切り替えです。河口部を区域外に切り替えないと、埋め立て自体が困難になる重大問題です。しかし、これにも名護市の協力が不可欠のため、見通しが立っていません。
岩礁破砕許可
辺野古の海の埋め立てで、唯一、危険度が高いのが護岸工事です。防衛局は今年7月、護岸工事に関する事前協議を県に申し出ましたが、その後、防衛局は一方的に協議を打ち切りました。
ただ、辺野古で抗議船の船長を務める沖縄平和市民連絡会の北上田毅さんは、こう指摘します。「埋め立て承認願書によれば、護岸工事に入る前に汚濁防止膜を設置するが、これを固定するために最大、286個の巨大コンクリートブロックを投入する必要がある」
これらを投入するためには、県知事の岩礁破砕許可が必要です。
新基地に向けた安倍政権の常軌を逸した強権ぶりは軽視できませんが、沖縄県・翁長知事と名護市・稲嶺進市長が一連の権限を行使し続ければ、新基地阻止は十分に可能です。北上田さんは言います。「翁長県政の真価は、これから問われる」
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