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2015年11月2日(月)

主張

財務省の予算提案

国立大学交付金削減を許すな

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 財務省が大学予算削減のために、国立大学の授業料引き上げと運営費交付金の大幅削減の方針をまとめ、文部科学省に提案しました。国立大学協会(国大協)や中央教育審議会(文科相の諮問機関)が抗議声明を出すなど、危ぐの声が広がっています。

授業料40万円増の危険が

 財務省提案は10月26日の財政制度等審議会に示され、了承されました。同提案は、国立大学に対して運営費交付金に頼るなと脅し、今後15年間、交付金を毎年1%削減することで、授業料引き上げや産学連携などによる毎年1・6%の自己収入増と、少子化に対応した大学の「規模の適正化」を迫るものです。高等教育にたいする国の責任放棄といわざるをえません。

 第一の問題は、産学連携による収入増には限界があり、交付金削減は授業料の大幅引き上げを招きかねないことです。仮に、授業料引き上げだけで自己収入を増やすとなれば、毎年2万5千円程度値上げし、16年後の授業料は40万円増の93万円になります。経営難の私立大学も値上げに踏み切り、1970年代から2005年まで続いた大学全体の「値上げの連鎖」が復活します。

 現在、大学4年間で必要な費用は約670万円です(日本政策金融公庫調査)。アルバイト漬けの学生や、経済的不安を抱えながら進学にむけて勉学に励む高校生に、さらなる経済的負担を強いることはあってはなりません。財務省提案は、憲法26条が求める「教育を受ける権利」の保障を投げ捨てる暴挙です。

 第二の問題は、運営費交付金の削減により、少子化に対応した「規模の適正化」を図るとする提案は、大学の再編・縮小を招くことです。運営費交付金は04年に国立大学法人化された後、1470億円(11・8%)も削減されました。経常収支における交付金の割合は、48%から34%に低下し、教育研究費が枯渇する大学もあります。

 国大協は声明で「運営基盤は急激に脆弱(ぜいじゃく)化しており、諸経費の高騰も相まって危機的な状況にある」と訴えています。財務省提案どおり毎年1%削減を続ければ、交付金は16年後に1948億円の削減です。中小規模の国立大学約40校分に匹敵します。大学が授業料を据え置くなら、教育研究組織の大幅縮小しかありません。ノーベル賞の連続受賞に象徴される国際的に高い水準にある基礎研究の基盤を失いかねません。

 18歳人口が減少するから規模を縮小するという議論は、あまりにも短絡的です。他の先進諸国と比べて日本は、大学進学率が低く、社会人学生も留学生も極めて少ないのが現状です。年齢や出身を問わず、誰もが大学で学ぶことができる環境の整備こそが求められています。社会の知的基盤である大学が「学問の府」にふさわしいやり方で改革することは、日本社会の発展のためにも欠かせません。

財政支援の充実こそ必要

 いま必要なことは、政府主導の再編・縮小ではなく、大学の自主的な改革の努力であり、そのためには、国公私立をこえて、大学自らが大学のあり方を議論する場をつくることと、私立大学も含めた財政支援の充実です。

 国立大学交付金の「毎年1%削減」は亡国の道であり、財務省提案は撤回すべきです。


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