2015年11月1日(日)
おおさか維新 泥沼の船出
「新党の名前、もう『橋下維新の会』でいいじゃないのと思ったんですよ。でも(代表が)照れ屋なもんですから」。国政新党「おおさか維新の会」の幹事長に指名された松井一郎大阪府知事は、代表の橋下徹大阪市長をこう持ち上げました。
「次の5年以内には国会でも過半数をとれる」。橋下氏の大言壮語や、女性議員による新しいロゴの発表など、パフォーマンスだけは派手な結党大会でした。
しかし実態は、政党助成金が振り込まれる通帳の取り合いなど、維新の党との分裂騒動が訴訟にまで発展する中での泥沼の船出です。
橋下氏は、5年前の2010年の4月に地域政党「大阪維新の会」をつくり、12年9月に国政政党「日本維新の会」を結党させて以来、合流と抗争、分裂を繰り返してきました。今回は「先祖返り」ともいうべき橋下党に“純化”したというのが実態です。国会議員が橋下氏の国政進出を促すと拍手と歓声が上がるなど議員たちは相変わらずの橋下氏頼みです。
しかし、その橋下氏は市長任期満了(12月18日)で政治家を引退すると言明。周囲はウソと詭弁(きべん)でしか復帰できない政治家を待ち望むという、こんな矛盾に満ちた党もありません。
橋下氏らは演説で大阪維新は「実行」に力点を置いてきたと強調。大会では「大阪の改革を全国に」との言葉も飛び交いました。しかし、いったい何を実行してきたというのか。
大阪府では08年2月以来の橋下・松井府政で府民の命や暮らしの予算が1551億円は削られました。雇用者報酬も家計消費支出も府内総生産も全国以上に落ち込み、財政も悪化。市政でも生活施策の破壊や、見境のない民営化押し付け、憲法違反の職員「思想調査」などの無法行為を繰り返し、数々の暴言と不祥事で大阪の名を汚してきました。
橋下氏系の政治勢力は国政でも、安倍政権を右から引っ張り、野党の共同にくさびを打ち込むなど、悪い影響しか与えてきませんでした。だからこそ全国的には見放されてきたのです。
しかし橋下氏は、かつて日本維新の会で共同代表を務めた石原慎太郎元東京都知事が「彼の演説のうまさは若いときのヒットラー」と絶賛したほどの詭弁の“名手”。「1回限り」といっていた住民投票で市民がノーの審判を下した「大阪都」構想という大阪破壊を屁(へ)理屈で再び持ち出し、再び大阪に不毛な対立を持ち込もうとしています。
それだけに今回の大阪府知事・市長ダブル選挙で、大阪で橋下「維新」政治に終止符を打つことが、切実に求められます。(藤原直)