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2015年10月27日(火)

きょうの潮流

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 〈傘(からかさ)も化けて目のある月夜哉(かな)〉。傘おばけならぬ破れ傘から月を見たのでしょうか。ほのぼのとした滑稽さです。最近見つかったといわれる与謝蕪村の200余句の一つ。奈良県の天理大学付属図書館で展示中です▼来年は蕪村生誕300年。多才さで図抜けています。俳句、絵画、両者を合わせた俳画。画風も中国風の山水図から現代の漫画にも似たユーモラスな人間描写までさまざまです。生き生きとした庶民の姿から躍動するエネルギーが伝わってきます▼伊藤若冲(じゃくちゅう)、池大雅、円山応挙と江戸中期を代表する画家たちが同じころ同じ京都で活躍していました。蕪村と若冲は同い年で近所に住んでいたのに交流の痕跡がなく、その謎が想像をかきたてます▼江戸期は言論弾圧の時代でもありました。世情への風刺が幕府ににらまれれば財産没収、用足しや食事のときも外すことを許されない手鎖の刑。その恐ろしさは故井上ひさしさんの『手鎖心中』や『戯作者銘々伝』に描かれています▼消滅した芸術もあります。漢詩の形式で時代を面白くよんだ「狂詩」は風俗統制を強いた寛政の改革によって衰退させられました。歌舞伎、俳句、落語など江戸時代から受け継いだ芸術は多い。ただ、過酷な弾圧に耐えたものだけが残りました▼文化遺産を未来に伝えるのは現代人の役目です。それを考えれば、目先の「社会的要請」に沿わない文系学部は廃止・転換せよとは言えぬはず。国立大学にそんな通知を出す役所が文部科学省とはあまりに悲しい。


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