2015年10月26日(月)
国立大学文系の再編・縮小 安倍政権の不当な介入(下)
交付金テコに組織再編競争
文系縮小を狙う安倍政権による第二の介入は、国が国立大学に配分する運営費交付金制度の改悪です。
国立大学の運営費交付金は、2004年の法人化の際に「従来以上に…所要額を確保する」(参院付帯決議)とされたにもかかわらず、1470億円(11・8%)も削減されました。その一方で、2012年度予算からは、「機能強化」のための組織改編を促す予算を運営費交付金のなかに導入し、2015年度は156億円が盛り込まれました。
さらに、来年度からの第3期中期目標・計画期間では、運営費交付金の中に三つの重点配分((1)世界最高水準の教育研究、(2)分野ごとの優れた教育研究、(3)地域ニーズへの貢献)という予算枠を新設し、各大学にいずれかを選択させます。来年度概算要求では重点配分に404億円を計上しています。各大学は、交付金を多く獲得するために組織再編を競うことになります。
法人法にも反し
第三は、中期目標・計画の策定過程での介入です。
国立大学法人法は、文科大臣が中期目標を定めるとしていますが、「教育研究の特性に配慮」して実際上の作成主体は大学とされ、大学が策定した原案を国は最大限尊重しなければなりません。文科大臣による中期目標策定においても、「教育研究業務自体は業務の縮減の対象とし得ない」(『国立大学法人法コンメンタール』)と解釈されています。
ところが、6月8日の文科大臣通知は、人文・社会科学系や教員養成系の学部・大学院の「廃止」「転換」を求めました。明らかに「教育研究の特性に配慮する」とした法人法の趣旨に反する通知です。
内閣改造(7日)で就任した馳浩文科大臣は、通知について「32点しかつけられない」(10月9日)と言いながら、通知の撤回は拒否しています。通知は法的拘束力があり、人文・社会科学系に対して「廃止」の圧力がかかっています。
このように安倍政権は、大学の自主性・自律性を高めるとした法人法の趣旨に反する不当な介入によって文系の縮小を進めています。
「通知」は撤回を
「人文社会科学系を軽視していない」という言明に責任をもつのなら、(1)「ミッションの再定義」を口実に、文系の定員削減を迫ることはやめる(2)基盤的な教育研究経費は安定的な運営費交付金で保障し、少なくともこれ以上は削減しない(3)文科大臣通知(6月8日)を撤回することが不可欠です。
(土井誠・党学術・文化委員会事務局次長)
(おわり)
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