2015年10月26日(月)
きょうの潮流
楕円(だえん)球の行方にこれほど一喜一憂した経験は、初めてかもしれません。ラグビーのワールドカップ(W杯)イングランド大会が今週末の31日、1カ月半のたたかいの幕を閉じます▼ときに選手の手からこぼれ落ち、いったいどこに転がるかわからないラグビーボール。なぜ楕円球なのか。有力な説は、その昔、豚の膀胱(ぼうこう)をふくらませ、それに皮を張り合わせたものをボールとしていたからだというものです。発祥の地といわれる英国のラグビー校では、破裂しやすいため2個用意することまで決められていたと、『スポーツ・ルール学への序章』(中村敏雄著)にはあります▼その不確かなバウンドゆえに、しばしばままならぬ人生にも例えられますが、このボールで日本代表は“確かな足跡”を残しました▼小さな体を鍛え上げ、大きな男たちを次々と倒した―。世界からもそのプレーは称賛されました。ここにきて“確かな勲章”も加わりました▼英国の専門紙「ラグビー・ペーパー」が1次リーグの反則数などを基に独自に集計。日本は参加20チーム中、「最もクリーンで規律のとれたチーム」と評価されたのです▼ラグビーにはルールの前文として、心得を説いた「ラグビー憲章」があります。それはこんな一文で結ばれています。「高い水準のスポーツマンシップ、倫理的な行動…をラグビーが有することを真に誇りに思う」。あるべき姿を示しつつたたかった軌跡。日本開催の2019年大会に向けても大きな一歩となりました。