2015年10月25日(日)
国立大学文系の再編・縮小 安倍政権の不当な介入(上)
「ミッション再定義」で押し付け
人文・社会科学系や教員養成系の学部・大学院の「廃止や社会的要請の高い分野への転換」を求める文部科学大臣通知(6月8日)に対して、日本学術会議が「大きな疑問」との声明を発表するなど、学術界から異論が噴出し、マスメディアも批判を強めています。文科省は「人文社会科学系などの特定の学問分野を軽視したりしない」(高等教育局長、9月18日)と釈明していますが、現実には、人文・社会科学系の縮小が進行しています。
地方で定員削減
国立大学の学部の来年度入学定員は、12大学で306人が削減されます。その削減のターゲットは地方大学です。(表参照)
教員養成系のいわゆる「ゼロ免課程」は、設置から四半世紀がたち、ユニークな教養教育が学べる課程として充実しています。入試倍率が高いにもかかわらず、来年度1112人もの定員が募集停止となります。
全86の国立大学の来年度からの中期目標・計画(6年間)の素案が20日発表され、33の学部・大学院が、人文・社会科学系を見直すとし、定員削減を明記する大学もありました。9大学が「ゼロ免課程」を廃止します。
こうした再編・縮小が進むのは、安倍政権による大学への不当な介入があるからです。
第一は「ミッションの再定義」による介入です。
「ミッションの再定義」とは、「国立大学の機能強化」のために、各大学の専門分野ごとに「強みや社会的役割」などを明確にするとして文科省が各大学に作らせたものです。人文・社会科学系だけに「全学的な機能強化を図る観点から、18歳人口の動態や社会ニーズを踏まえつつ…規模等の見直しに取り組む」と規模を縮小する文言が一律に入っています。
予算削減の脅し
文科省は、大学と合同で作ったと説明しますが、実際は原案を文科省が作り、予算削減の脅しで大学に押し付けたものです。2012年10月11日、ミッションの再定義の説明会で文科省は、1兆円を上回る国立大学運営費交付金は「霞が関予算全体の中でかなり目立っている」とし、「予算削減を少しでも食い止める」ためには、「ミッションの再定義」で「大学の機能強化」をはかるしかないのだと脅していました。
来年度の入学定員の決定をめぐっては、ある地方大学で「ゼロ免課程」の定員を文系学部にまわして定員を増やそうとしたところ、文科省が「ミッションの再定義において、18歳人口の減少による規模の縮小を明らかにしている」との口実で、文系の定員削減をおしつけました。
2003年に成立した国立大学法人法は、国立大学の自主性・自律性を高めるために、国の関与は中期目標・計画の策定時と期間終了時の業績評価の際に限定しています。
ところが「ミッションの再定義」が押し付けられたのは、中期目標期間の途中です。法人法の趣旨に反する脱法的な介入といわざるを得ません。(土井誠・党学術・文化委員会事務局次長、下に続く)
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