2015年10月23日(金)
主張
就学援助の縮減
子ども応援からの逆行許さず
小中学校に通う子どもたちが、経済的理由で就学困難にならないよう学用品代などを補助する就学援助の対象を減らす自治体が少なくありません。文部科学省の発表では2015年度に対象を縮小した自治体は、少なくとも27市町村ありました。安倍晋三政権が生活保護の扶助基準切り下げを強行したうえ、基準引き下げが就学援助に連動しないようにする対策を、自治体に丸投げしたためです。お金のことで子どもに肩身の狭い思いをさせたくないという親の願いに逆らう事態が、国の政策で引き起こされたことは重大です。
生活保護切り下げの影響
就学援助は、経済的に苦しい家庭の小中学生の学用品代、給食費、修学旅行費などを補助する仕組みです。憲法26条で掲げる「教育を受ける権利」「義務教育の無償」を具体化した制度の一つです。
生活保護世帯の子ども(約15万人)と、生活保護と同じように困窮し、市区町村が援助を独自認定した世帯の子ども(約137万人)が利用しています(13年)。全小中学生の約6人に1人の割合です。最近は貧困と格差の広がりのなか、利用率は高止まりしています。
日本は義務教育の段階でも、修学旅行費の積み立てや学用品、体操着、クラブ活動費などかなり多くの出費が必要です。経済的に苦しい子育て世帯にとって就学援助を利用できるかどうかは、子どもの就学の条件と環境を最低限整えることができるかどうかがかかった、極めて重大な問題です。
このような子育て世帯の苦悩に追い打ちをかけたのが、安倍政権が13年度から15年度まで段階的に実行している生活保護の生活扶助基準の過去最大規模の切り下げです。食費や水光熱費などを削減する扶助基準引き下げ自体、9割以上の生活保護利用世帯の暮らしを直撃する大改悪です。同時に多くの自治体は、就学援助支給を決める所得基準を、生活扶助基準の「1・3倍未満」などと定めているため、生活扶助基準引き下げに連動し就学援助の支給基準を引き下げた自治体が生まれたのです。
生活扶助基準引き下げにたいする国民の批判が集中し、安倍政権は「就学援助などに影響させない」として自治体に必要な手だてをとるように通知しました。しかし、財政的裏付けもない“自治体まかせ”に終始したため、自治体によっては対策がとられませんでした。
文科省調査(6日発表)でも対策をとっていない市町村は昨年9月時点の17から27に増えました。川崎、相模原、大阪、福岡の政令指定都市も含まれています。生活保護問題に取り組む市民団体は、文科省調査は影響を少なく見せる分類になっており、実際は200を超える自治体で縮小された恐れがあると指摘しています。影響の広がりは計り知れません。
支援の拡充こそが必要
「子どもの貧困対策法」が制定され、国・自治体に対し子ども世帯への経済的支援強化が求められているのに、就学援助の対象縮小を加速させた安倍政権の責任は重大です。自治体での就学援助の縮小を許さない世論と運動を広げるとともに、生活扶助基準引き下げそのものを撤回させることが必要です。貧困と格差を拡大する安倍政権の社会保障・教育制度破壊をやめさせ、制度の再生と拡充に転じる政治の実現が急がれます。