2015年10月22日(木)
きょうの潮流
あの事件も、始まりは野球賭博でした。巨人が5年連続日本一を成し遂げた1969年の10月。多くの国民を熱狂させていたプロ野球は、存在自体を問われることになります▼「西鉄・永易(ながやす)投手が八百長 野球賭博暴力団から金もらう」。新聞記事に端を発した一連の疑惑は西鉄球団から球界全体に飛び火。警察や国会まで巻き込み、社会を揺るがしました。永久追放を含む20人近い選手が処分された「黒い霧事件」です▼次々に発覚する不祥事。憲法学者だった当時の宮沢俊義コミッショナーは「これで終わりかと言われたら、私はそう言い切る自信はない」と口にしました。黒い勢力との癒着をどう断ち切るか。今も続くプロ野球の根深い問題です▼野球機構の調査で巨人の3投手が野球賭博をしていたことが分かりました。賭博の常習者とかかわっていた2人はマージャンやバカラでも一緒に賭博を。常習者をたどっていくと多くの場合、反社会的勢力にたどりつくそうです▼巨人は3年前にも原辰徳監督が過去の女性関係に絡んで元暴力団とみられる人物にゆすられ、1億円を渡していました。球団や親企業が真剣に反省し、再発防止を徹底してこなかったことを示しています▼苦しいときに西鉄の監督を務めた故・稲尾和久さんは、引退後も事件を風化させてはならないと話していました。「野球選手の立場と名声をつけねらう『黒い勢力』が、今でもいなくなったわけではない」。本気で根を絶たなければプロ野球の未来はないでしょう。