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2015年10月12日(月)

2015 焦点・論点

新基地建設反対と戦争法

映画「戦場ぬ止み」監督 三上 智恵さん

国会前が「辺野古」に見えた 沖縄発の「一点共同」広がれ

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 沖縄県の翁長(おなが)雄志知事は13日にも、名護市辺野古(へのこ)の米軍新基地建設に伴う埋め立て承認を取り消す意向です。戦争法廃止の国民的な運動とも連動し、新基地建設反対のたたかいは新たな局面に入ります。沖縄のたたかいを長年取材してきた映画監督の三上智恵さんに思いを聞きました。(聞き手 内藤真己子)


 ―戦争法反対で空前の運動が湧き起こり、強行成立後も続いています。沖縄の米軍新基地建設に抗議するたたかいを取材してこられた立場から、これをどう見ていますか。

写真

(写真)みかみ・ちえ 東京都生まれ。ジャーナリスト、映画監督。1995年から琉球朝日放送のキャスター。2012年、初監督映画「標的の村」が数々の賞を受賞。14年に独立。映画「戦場ぬ止み」を今年5月公開。
撮影・橋爪拓治

 戦争法の強行採決は残念でしたが、反対の声がこれだけ広がったことは、すごく良かったと思います。

 戦争法に先立ち、「戦争ができる国」のための法律がたくさん成立しています。特定秘密保護法はよく知られていますが、米国の戦争を自衛隊が支援するテロ特措法・イラク特措法、何かあったときには港湾や病院や学校だけでなく土地も家も差し押さえられる「国民保護法」などがそうです。沖縄では一つひとつが県民生活にどんな影響を与えるか、大ニュースでした。ところが本土では国民の関心もそれほど高まらないまま、バタバタと決まっていきました。

 でも今回は、立憲主義、民主主義を破壊してでも自分たちの思う形の国=戦争する国をつくるという安倍さんの魂胆にみんなが気づいた。何が奪われようとしているのか、国民が気づいたということをプラスに捉えています。

沖縄の命の太い流れ

 ―国民一人ひとりが主体となった創意あるたたかいでしたね。

 国会前が「辺野古」に見えました。沖縄の人たちの抵抗の形がメジャーになってきたと思いました。

 私は映画「標的の村」や「戦場ぬ止み(いくさばぬとぅどぅみ)」で沖縄の人々が歌いながら笑いながら、でも絶対引き下がらないと抵抗している姿を描いてきました。声をあげることが自然だし、かっこいいし、どちらかといえばすっきりする。世代を超えてやっていかなければならないものってある。そういう沖縄の命の太い流れのようなものを全国の人に知ってほしかったんです。「自分たちも、これやりたい」と思ってもらいたかった。だから「標的の村」を見たという人がシールズの中に多くいて、国会前であんなたたかいをやってくれたのは、すごくうれしいです。

再び戦場になる危惧

 ―戦争法反対の一点で保革を超えた共闘が各地で広がりました。

 既存の枠組みを超えた「島ぐるみ闘争」のようなワン・イシュー(一つの争点)での共同の発想は、沖縄から生まれたものだと思います。

 沖縄にいると日本が戦争する国に向かっていることがあからさまに分かるんですよ。辺野古に弾薬庫と2本の滑走路と強襲揚陸艦が接岸する軍港をつくろうという。どうみても米軍の出撃基地です。自衛隊も共同利用することが明らかになっています。アメリカが「ならず者国家」と判定したら、ここから出撃していく。いままで日本はアメリカが他国を攻めたとき、「ここは攻めちゃいけない」って一度も言ったことがありません。沖縄の米軍基地から出撃し、戦争の理由にした大量破壊兵器もなかったところで無辜(むこ)の民を殺しています。

 その米軍の自衛隊の出撃基地を、今度は日本の国費を使い日本の意思でつくろうとしている、それが辺野古の本質だということを映画で告発したかったのです。

 日本の防衛費は第2次安倍政権になって過去最高の約5兆円になっています。中国の防衛費が上がったからと、日本人は中国の脅威ばかり心配していますけど、中国から見たら日本の防衛費こそ、どんどん上がっている。しかも中国に一番近い沖縄に新しく出撃基地をつくる。とても挑戦的なことです。

 そのうえ宮古島には自衛隊のミサイル基地を置こうとしている。どちらが軍事的緊張を高めているのでしょうか。このままでは再び沖縄が戦場になると危惧しています。

基地も戦争法もノー

 ―翁長知事が、辺野古新基地建設の前提となる、前知事による埋め立て承認の取り消し手続きに入りました。

 辺野古に新基地をつくることを認めないという知事の決断は沖縄県民の総意です。それを軽んじる安倍政権は民主主義国家の政権の体をなしていません。

 戦争法反対、民主主義を守れと国会前に集まった市民のみなさんは、翁長知事の決断を支持し、ぜひとも新基地建設はやめろと政権に向かって声をあげてほしいと思います。それは戦争法を廃止することと同じくらい大事なことです。辺野古新基地は戦争する体制をつくるということ。新基地をつくらせないことと、戦争法廃止はまったくいっしょです。

 これは民主主義の問題でもあります。沖縄は米軍基地のために、財産権、居住の自由、平和的生存権など基本的人権を長年侵害されてきました。ベトナム戦争やイラク戦争の出撃基地となってアメリカの戦争に協力させられ、絶えず攻撃の危険にもさらされてきました。

 安倍政権が戦争法を強行し、日本は民主主義が奪われ、立憲主義も奪われています。日本の国自体が国民の生活や命を大切にしない国になってしまいます。これは沖縄の苦難を長年放置してきたこととつながっていると私は思います。

 だから、全国の人が辺野古の問題を自分の足元にふりかかっている問題として、自分たちの問題としてたたかってほしい。軍事優先の国家に進みつつあるこの国を立ち止まらせ、沖縄の民意を尊重することから、国民の手に民主主義をゆるぎないものとして取り戻したい。私は「島ぐるみ」のたたかいが、この国の、戦争の息の根を止めるたたかいとして、後世に語り継がれるものになってほしいと思っています。


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