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2015年10月12日(月)

「文系廃止」通知 破綻に直面

問われる大学の「類型化」路線

産業界の要求“丸のみ”

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(写真)「文系廃止」を国立大学に求めた文科省の通知

 文部科学省が6月に出した人文社会科学系や教員養成系の学部廃止を求める通知が「文系軽視」と批判を浴び、同省が「誤解」だといって釈明に追われています。

 「文部科学省は、人文社会科学系などの特定の学問分野を軽視したり、すぐに役立つ実学のみを重視していたりしてはいない」

 9月中旬に開かれた「日本学術会議」の幹事会で、文科省の常盤豊高等教育局長は、こういって通知の「真意」を説明しました。

大学側は批判声明

 同会議は7月、「人文社会系の軽視は、大学教育を底の浅いものにしかねない」と批判する声明を発表。幹事会でも「通知は説明通りには読めない」などの声が出されました。

 通知は、「国立大の教員養成系と人文社会科学系の学部・大学院」を名指しして、「組織の廃止や転換」を求めました。「理系重視」「即戦力」を求める産業界の意向に応えたものでした。

 財界は「研究面で新しい発見がなくなってきたり、動きが止まっているような学問領域を思い切ってやめて、新しい領域、学際分野を立ち上げるべきだ」(小林喜光経済同友会代表幹事、経済財政諮問会議)と主張。「国際競争力強化」のために、学部学科の統廃合を求めてきました。

 通知に対して「目先のことしか考えない暴論だ」と批判が噴出。下村文科相(当時)は9月中旬の記者会見で「非常に誤解を与える文章」とのべ、廃止は教員養成学部のうち教員免許取得を卒業要件にしない課程のこと▽人文社会科学系も質の転換が求められているという意味―と釈明に追い込まれました。

 経団連も「即戦力を有する人材を求める産業界の意向を受けたものであるとの見方があるが、産業界の求める人材増は、その対極にある」といわざるをえなくなりました。

 ところが、馳浩文科相は9日、「本来の趣旨は説明済みなので撤回しない」とのべるなど固執しています。

 しかし、通知は「廃止」と明記しており、「誤解」というのなら、きっぱり撤回するしかないものです。

 問題は通知だけにとどまりません。背景には文科省が2012年度から進めてきた「ミッションの再定義」と呼ぶ大学・学部の再編統合計画があります。

理系重視再編狙う

 「理系重視」など政府の方針を念頭に、各大学に対し「3類型」―(1)世界最高の研究(2)全国的研究(3)地域貢献―から一つを選んで取り組むよう求めるもので、「文系廃止」通知はその一環です。

 各大学の取り組みを評価して、国立大学の基盤的経費である「運営費交付金」を重点配分する計画です。

 運営費交付金は、法人化後10年で1292億円も削減され、教育研究に重大な障害が生じています。代わりに競争的研究費への依存が強まっています。

 運営費交付金の重点配分で、各大学が類型ごとに資金獲得競争に追い立てられ、大学や学部の再編・統合が進められる危険性を抱えています。すでに「教育学部と人文学部の再編で定員を減らし、理工学部を増やす」(弘前大学)などの計画が打ち出されています。

 通知を撤回し、大学の「類型化」路線、運営費交付金の重点配分を見直すかどうかが問われています。

 (深山直人)


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