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2015年10月11日(日)

ノーベル平和賞と「アラブの春」5年

「民主的移行」励まし テロ・経済危機…課題も

チュニジア

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 ノーベル賞委員会は、9日にノーベル平和賞を「チュニジア国民対話カルテット」に授与した理由について、長期政権を2011年に民衆が倒した後、「多元的民主主義の建設に決定的に貢献した」と説明しています。


 「カルテット」は、チュニジア労働総同盟(UGTT)、チュニジア工業商業手工業連盟、チュニジア人権連盟、チュニジア弁護士会の四つの団体で13年夏に設立されました。

政権交代に道

 当時、イスラム主義政党主導の暫定政府の下で進んだ「政治のイスラム化」に世俗的な野党勢力が反発。野党政治家の暗殺が相次ぎ、政治対立が深刻化。「カルテット」は両者を仲介し、選挙の実施と平和的な政権交代に道を開きました。

 「カルテット」の一つ、チュニジア人権連盟のモクタル・トリフィ名誉会長は「チュニジアのプロセスへの激励だ」としたうえで、「テロリズムと経済危機から国を救わなくてはならない」とメディアに語りました。

 チュニジアの現状を見ると今年、2度にわたる観光地への襲撃で日本・英国など外国人を含む60人が殺害され、観光産業が壊滅的打撃を受けました。米英のイラク戦争が生んだ過激組織ISへの外国人戦闘員の出身国調査で、チュニジアは最多の3000人超です。

 ノーベル賞委員会は今回、「チュニジアで始まったアラブの春が北アフリカと中東の諸国に広がった」が、「民主主義と基本的権利を求める闘争が停止、挫折した」と指摘。チュニジアの「民主的移行」を評価しつつ、「賞がチュニジアの民主主義擁護への貢献と、平和と民主主義促進を求めるすべての人への励ましになるよう希望する」とのべています。

「交渉の席に」

 チュニジアに続き長期政権を打倒したエジプトで大統領選挙に出馬したエルバラダイ氏は、今回の授賞の発表後、ツイッターに「チュニジア人にわくわくさせられる。対話、包括、民主主義、人権尊重は唯一の道」と書き込みました。

 同国では、長期政権の退陣後に選挙で勝利したイスラム同胞団が異論を排除する強権政治へと転落。それへの国民の反発、軍の介入を経て、現在は軍が後押しするシシ政権が樹立され、「民主化」とはほど遠い現状です。

 リビアでは仏英米軍の軍事介入を経て、事実上の無政府状態に。シリアでは、アサド政権と反体制派との内戦の中で、過激組織ISが台頭、さらに米など有志連合軍やロシア軍による軍事攻撃などで錯綜(さくそう)した軍事紛争に発展しています。

 チュニジアのUGTTのフセイン・アバシ書記長は9日、受賞について「チュニジアにとって大きな喜びと誇りだ。アラブ世界にとっての希望でもある」とのべるとともに、中東全体にたいして、「武器を置き交渉の席に着き話し合えというメッセージだ」とロイター通信に語っています。

 (カイロ=小玉純一)


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