2015年10月6日(火)
高校生の政治的活動 禁止・制限を強調
全面禁止は見直し
文科省が新通知
文部科学省は5日、18歳選挙権の実施に向けて、高校生の政治的活動を全面禁止してきた1969年通知を廃止し、新たな通知案を発表しました。全面禁止は見直したものの、禁止・制限を強調する内容です。校長やPTAの代表らに意見を聞いた上で、今月中にも通知します。
新通知では、高校生の政治的活動にかんして、「生徒が国家・社会の形成に主体的に参画していくことがよりいっそう期待される」とした上で、「無制限に認められるものではなく、必要かつ合理的な範囲内で制約を受ける」としました。
学校外で行う政治的活動について、違法・暴力的なものになる「おそれが高い」場合は「制限または禁止」。「学業や生活に支障がある」「生徒間に政治的対立が生じる」など学校教育に支障がある場合は「禁止も含め指導する」としています。
一方、▽授業や生徒会活動、部活動を利用して選挙運動や政治活動を行うことは禁止、▽放課後や休日であっても構内での選挙運動や政治活動は制限・禁止する―としました。
教員については、「個人的な主義主張を述べることは避け、公正かつ中立な立場で生徒を指導する」とし、政治に関する教育については文科省が作成する副教材を使用し、模擬選挙など実践的に行うよう求めました。
また、「学校の内外を問わず、地位を利用して特定の政治的立場に立って生徒に接することのないようにする」「特定の政治上の主義・施策や特定の政党を支持したり、反対することにならないよう留意する」としてあり、憲法で保障された教員の活動にさまざまな制約を課しています。
18歳選挙権の実施に逆行
文科省の1969年通知は、「生徒の政治的活動は望ましくない」として政治的活動を全面禁止していました。憲法や子どもの権利条約で保障された「表現の自由」「意見表明権」などの権利をじゅうりんするものであり、この廃止は当然です。
しかし、文科省の新たな通知(5日)でも、学外の政治的活動まで「禁止」「制限」するとしています。放課後や休日でも学内であれば「制限」「禁止」。生徒会活動や部活動でも「禁止」です。旧通知から本質的に転換されたとはいえません。
これでは、「自粛」が横行し、政治問題を考えたり、議論することも抑圧されることになります。問題があれば行政的に禁止・制限するのではなく、議論を通じて納得を得られるような指導をして解決すべきです。子どもたちが、憲法の求める平和的国家と社会の形成者となっていく上で政治的諸権利の保障は必要不可欠のものです。
教員への制約も重大です。「教員は個人的な主義主張を述べることは避け(る)」などということになれば、萎縮するだけです。
政治問題について生徒から「先生はどういう意見か」と聞かれれば率直に意見を述べるなど、自由な雰囲気の中でこそ主権者教育は生きいきとしたものになり、生徒たちの政治的教養も高まります。
教員には専門職として教育の自由が保障されるべきです。教材も含めて教育内容について教員の裁量を保障し、政治を自由に語り合える環境を保障することが、主権者教育にとっても不可欠です。
この間、戦争法案について各地で高校生が声を上げ、行動する場面が見られました。主権者として、また戦争法で戦場に送られる世代として当然の行動です。ところが、自民党はこうした行動を敵視し、抑え込もうとしています。18歳選挙権の実施に逆行するような自民党のねらいに悪用される通知であってはなりません。(深山直人)