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2015年10月5日(月)

戦争法 米軍防護の危険

南シナ海で中国と軍事衝突も

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 戦争法の現実的危険として、南スーダンPKO(国連平和維持活動)における「駆けつけ警護」とともに、中国と東南アジア諸国間の領土・領海問題が発生している南シナ海への軍事的関与が浮上しています。日本政府は「中国を脅威とみなしていない」(岸田文雄外相、8月5日・参院安保法制特別委員会)としながらも、不必要な軍事的対立を起こしかねない危険な動きをみせています。(中祖寅一)


地図:南シナ海

 日本共産党の小池晃議員が暴露した自衛隊統合幕僚監部の内部文書(8月11日の参院安保特)で、「南シナ海」と明記されています。

 新ガイドライン(日米軍事協力の指針、4月29日に合意)と戦争法の関係について説明した同文書は、日米間の「平時からの協力措置」として、(1)「情報収集、警戒監視及び偵察」(ISR)(2)「アセット(装備品)の防護」―が併記されています。このうち、(1)で、「南シナ海に対する関与のあり方について検討」するとしています。(図)

哨戒活動に

 関与の具体的内容は明記されていませんが、米側は「日本が(南シナ海で)パトロール任務や活動を行うことを期待する」(カービー報道官)などと述べ、哨戒活動への自衛隊参加を期待しています。

 米国は「航行の自由」を侵害するとして、南シナ海への中国の進出を強く警戒しています。これを抑え込むために、同盟国を動員しようという考えです。ある専門家は「中国の原子力潜水艦の動きや、南シナ海での岩礁埋め立てなどが、その対象に含まれる」と指摘します。

 もう一つの重大問題は、前述の「アセット防護」((2))と、これに伴う「ROE(交戦規則)の策定等」です。「アセット防護」とは、「平時」「有事」を問わず、自衛隊と共同行動をしている米軍が攻撃を受けたり、標的になった場合、武器を使用して反撃する行為です。

論理の飛躍

 戦争法では、自衛隊法95条の武器防護規定を拡張し、95条の2で「米軍等の防護」のための武器使用を新設しました。地理的な制約はなく、日本近海だけでなく、南シナ海を含め、地球規模での「米軍防護」が可能です。ただ、もともと自衛隊基地への襲撃を想定しての武器防護規定を、外国軍隊の防護に拡張するのは論理の飛躍で、無理があります。

 新ガイドラインでは「訓練・演習中を含め、連携して日本の防衛に資する活動に現に従事している場合であって適切なときは、各々のアセット(装備品等)を相互に防護する」とされています。

 現実に南シナ海での共同監視を実施すれば、米軍などとの共同行動中に、中国軍との衝突の危険もあります。アセット防護は、その場合の軍事的対抗に備えることにあります。

 保守的な安全保障シンクタンクの専門家の一人は、「南シナ海は大変危険だ。中国と正面からぶつかる危険がある」と明言し、次のように指摘します。

 「アセット防護は艦隊、飛行機なんでも防護できる。『存立危機』の限定もないフルスペック(無限定)の集団的自衛権だ」

 戦争法案審議の中で、防護の対象には、米軍の航空機やイージス艦、空母までが含まれることも明らかにされました。海上自衛隊と米軍等の艦隊が「連合艦隊」として行動する危険な事態が想定されます。

 南シナ海は、かつての太平洋戦争の激戦地でもありました。侵略戦争の反省を曖昧にした日本が、再びこの海域で軍事活動を強めれば、中国側の強い敵対心をあおることになります。

基準共通化

 「アセット防護」のためには、日米間で武器使用基準を共通化することも必要となります。

 日本共産党の宮本徹衆院議員は、米軍のアセット防護のために武器使用を拡大すれば、米軍のROEとの調整、改定が必要になると法案審議の中で追及しました(6月19日)。防衛省は「同盟国である米国との間で、平素から、政策調整をはじめとして、意思疎通、共通化を図るのは当然」(黒江哲郎防衛政策局長)と強弁しています。

 小池議員が、統幕内部文書に「ROEの策定」「整備」と明記されていると追及(8月21日)すると、中谷元・防衛相は「当然に有しうる課題の認識だ」と開き直っています。

図:自衛隊統合幕僚監部の内部文書

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