2015年10月4日(日)
自衛隊が戦争法具体化 米軍実戦例を検討
戦場での医療行為想定 衛生隊員に医師の代役
戦争法の成立に合わせるかのように防衛省は、「有事」に最前線で自衛隊員が高度な医療行為を行える「第一線救命隊員」養成などの体制づくりを急いでいます。現行では医師しかできない医療行為を、救急救命士と准看護師の資格を併せもつ衛生科隊員ができるようにするものです。(西口友紀恵)
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4月に発足した、部外有識者で構成する「防衛省・自衛隊の第一線救護における適確な救命に関する検討会」(注)で議論が行われてきました。第一線救護とは「銃弾が飛び交う状況で、戦闘防護をしながらの救護」(同省)をさしています。
「現在は医師にしかできない医療行為を、最前線で衛生科隊員に認められないかが課題」(同)としました。
9月16日の第4回検討会で報告書案の最終審議を行いました。同省によると検討会は、自衛隊に現在約760人いる救急救命士の資格をもつ隊員に必要な教育を行い、最前線での実施へ向け新たな資格を設け、省内の審査機関が資格を認定するしくみを提示。
検討会では「議論は国内での有事を前提」としながら、引用された資料はもっぱら「対テロ戦争」の米兵の死因分析など、米軍が海外での実戦で得たデータでした。
2001年の「9・11同時テロ」以後の「対テロ戦争」(01〜11年、イラク、アフガン)で戦傷死した米兵4596人の87%が医療施設搬入前に前線で死亡、「うち25%が生存できた可能性があった。その死因の91%が出血、8%が気道閉塞」としています。
米軍では、前線での衛生兵らによる処置を止血だけでなく、いくつもの外科的医療行為に広げ、収容前戦傷者の死亡率を約6ポイント減らせたとするデータを得て、10年から全部隊に教育を開始していると示しました。
必要な緊急処置として挙げられたのは、のどを切開する気道確保や、外傷を受けた胸に針で穴を開け、空気を体外に出す胸腔穿刺(せんし)、出血性ショック防止のための骨髄への点滴、鎮痛剤投与など。自衛隊でも同様の医療行為を想定、海外での戦闘行為を想定した戦争法具体化の動きです。
(注)東京都立病院長を座長に、元自衛隊幹部、救急医療などの専門家、大学教授ら部外の9人で構成。第2回までの議事要旨と、資料は同省ホームページに掲載されています。
隊員死傷リスク増大するばかり
佐久総合病院医師・色平哲郎さんの話 先の戦争では「甲軍医」「乙軍医」がいて、甲軍医は後方に、乙軍医は戦死の可能性が高い前線でほとんど消耗品扱いだったといいます。今度の「第一線救護」も、同様のことを日本がまたやるという話で、まさに異常事態です。本来、憲法上やる必要のなかった軍事医学に予算をつけて養成し、自衛隊員を危険な現場に送る。国会審議で安倍政権は「自衛隊員のリスクは低くなる」と強調していましたが、「第一線救護」の強化は、実は隊員の死傷リスクが増大するばかりであることを傍証してしまいました。