2015年10月2日(金)
どうみる「橋下新党」結成
安倍暴走の補完に純化
記者座談会
地域政党「大阪維新の会」の橋下徹代表(大阪市長)は1日の記者会見で国政政党「おおさか維新の会」を結成すると表明しました。新党結成の背景を担当記者で話し合いました。
A 11月22日投票の大阪ダブル選の候補者も正式に発表したね。知事選が松井一郎知事、大阪市長選が吉村洋文衆院議員だ。
B このタイミングでの新党結成は、ダブル選勝利へはずみをつけたいという思惑か。橋下氏は「ダブル選に負ければ、(党が)消滅する」とハッパをかけている。1日の記者会見でも橋下氏は「偽物の維新になってしまったので本物の維新をつくる」「『大阪都』構想を掲げた本物の改革の党をつくる」とぶった。
孤立を深める姿
C 一見、攻勢的に見えるが、大局的には追い詰められ、孤立を深めているというのが、実際の姿ではないか。大阪市を廃止・解体する「大阪都」構想は一枚看板だった。ところが5月17日の住民投票で市民が選んだのは大阪市の存続だ。橋下氏は「政界引退」を表明せざるを得なくなった。
B 維新の党から「大阪組」が抜けて新党をつくらざるを得なくなったのも、背景には戦争法はじめ安倍政権の暴走に怒る世論の高まりがあった。野党共闘を貫いた松野頼久執行部に対し、「親安倍」の橋下・松井「大阪組」による分裂騒動だ。
C もともと橋下氏と安倍首相の距離は近い。悲願の改憲で橋下氏の協力を得たい安倍首相は、「大阪都」構想に理解を示し、橋下氏は改憲のために「なんでもやる」と応じる間柄だ。
B 松井氏は「日経」1日付でも「安倍政権とは価値観が合う」「新党で掲げる道州制は憲法改正しないとできない。憲法改正を進めるのは協力できる」とあけすけに連携を語っている。
A 分裂騒動のきっかけになったのは、山形市長選(9月13日投票)だった。民主党や共産党が応援する候補を当時の維新の党幹事長の柿沢未途氏が応援したのを問題視し、松井氏は辞任を迫った。
C 岩手県知事選(8月20日告示)では、維新の党の松野代表も、民主、共産、社民、生活といっしょに震災復興、戦争法案撤回を掲げる達増拓也氏の応援に回り、自民党を不戦敗に追い込んだ。
B 官邸は、戦争法案をめぐり維新の党を野党共闘から切り離し、修正協議などで協力を取り付けたかった。橋下氏は、ここでも安倍首相の援軍に回った。空前の規模になった戦争法案反対の国会前行動について「こんな人数のデモで国家の意思が決定されるなら、サザン(オールスターズ)のコンサートで意思決定する方がよほど民主主義だ」とツイッター。民意など気にするなというもの。あきれたね。サザンファンも怒るよ。
A 維新の党は安倍内閣不信任でも他の野党と足並みをそろえた。維新の党を丸ごと「安倍補完」政党にしようとした官邸と橋下氏の思惑ははずれた。
またも「都」構想
B それにしても、新党の看板や大阪ダブル選の公約に、住民投票で否決された「大阪都」構想を再び持ち出すとは、あまりにも市民をばかにしている。
C 橋下氏は「(住民投票は)1回限り」「ラストチャンス」といっていたからね。「大阪都」にかわる目玉が何もないということだろう。「バージョンアップ」というが、大阪市を廃止・解体することに変わりない。
B だいたい維新が府市の「二重行政」として問題にしてきたのは、政策の誤りである無駄な大型開発の競い合いや病院、学校など二重三重に手厚い施策が必要な福祉・医療、教育、中小企業支援などだ。
C 新党結成を「大阪組」の「純化」路線とみるむきもあるが、安倍暴走政治を補完することに「純化」する国政政党結成だ。大阪市解体によって権限と財源を集中させる独裁体制づくりを“実績”に国政への影響力を発揮しようという危険な野望だ。
B 住民投票では、「大阪市をつぶすな」「維新政治ノー」の野党や市民の共同が力を発揮した。大阪ダブル選では、その時以上に共同の力を出し切ることが求められているね。