「しんぶん赤旗」
日本共産党
メール

申し込み記者募集・見学会主張とコラム電話相談キーワードPRグッズ
日本共産党しんぶん赤旗前頁に戻る

2015年9月29日(火)

被災地の障害者は今 福島・南相馬にみる

通院の支援なし 足らぬ医療機関

このエントリーをはてなブックマークに追加 Yahoo!ブックマークに登録 mixiチェック

 東日本大震災と東京電力福島第1原発事故による放射能被害の影響が今も続く福島県南相馬市。4年半がすぎた今も、障害のある人たちの暮らしには多くの課題があります。ある障害者施設を訪ねました。(岩井亜紀)


写真

(写真)缶バッジづくりの作業をする人たち=福島県南相馬市

 にぎやかな室内。刺しゅう、缶バッジづくり、球根に色テープを巻くなど障害のある人たちがそれぞれの分担に汗を流します。作業所で働く多くの人には精神障害があります。

 「震災後、浪江町などからの避難者で人数が増え、雰囲気は前とちょっと違うけど仲良くやっています」。同市鹿島区の女性(53)は、こう話します。

 宮城県石巻市から移ってきた男性(26)は「仲間とうまくやっているから今は落ち着いている」と笑顔を向けました。


「普通が難しい」

 「よそから人が入ることで空気が少し変わると思うんです。月1回ではたいして支援することはできないけれど」と話すのは、埼玉県戸田市から来た女性(63)。2013年12月から月1回ほど同施設で作品づくりの手伝いなどのボランティアをしています。

 「みんなここにいるときは明るい。みんなが普通に暮らせるようにしたいけど、普通が難しい」。施設の理事長は表情を曇らせます。

 震災後、他地域から避難してきた障害者や津波で家族を失い、身寄りのない障害者など新たな仲間が増えました。若い職員がいまだに戻れず人手が不足している施設が市内にはあるといいます。定員は超過していましたが、「断るわけにはいかない」。

 長引く狭い仮設住宅での暮らしで「体調が悪化している人が震災直後より増えている」と理事長。ところが、移動手段がないため簡単に受診できる現状にはありません。

 同市では、障害者総合支援法に基づく移動支援について、通院、通学など定期的な利用は対象外。施設で働く障害者の場合、移動に関する他の支援もありません。そのため職員らがボランティアで医療機関への送迎を行っています。

看護職員123人減

 医療機関や医療従事者の不足も深刻です。

 相双地方では16病院中6院、129診療所中53が休止中(15年1月1日現在)。常勤医の数は震災前より4人増えましたが、看護職員は123人減りました(同)。一方、精神障害者は685人(11年3月31日)から977人(14年3月31日)と約42%増。

 「体調が悪いときは教えてね」。昼食後のミーティングで理事長が、障害のある仲間たちに呼びかけました。

 取材日の数日前の9月初旬、40代の仲間が突然、自宅で亡くなりました。親と仮設住宅で暮らしていました。グループホーム入居の相談があったばかりだったといいます。

 「精神障害の人たちは体調が悪くなっても適切に医療が受けられず、ますます悪化している。この現状を改善するには私たちはどうしたらいいのか。原発事故被害の渦中にあるこの地域の現状をみても、政府は再稼働するというのか」。理事長は、原発再稼働に突き進もうとする安倍政権の姿勢に怒りを隠しません。


見本紙 購読 ページの上にもどる
日本共産党 (c)日本共産党中央委員会 ご利用にあたって