2015年9月27日(日)
きょうの潮流
庭木に張られたクモの網が朝露で、きれいな形を浮かび上がらせていました。ふだんは気づかず頭にからんで、あわてますが、じっと見入ってしまいます▼クモは頭を下に向けて静止しています。この姿勢に疑問すら感じたことはありませんでしたが、「クモの世界の法則の一つ」だとありました(『昆虫科学読本』)。頭を上にして止まるクモは少数派です▼クモの法則は他にもあるといいます。それは、何千種もの円形の網を張るクモのほとんどは、網の下半分が上半分より大きい、つまり網は丸くないというもの。理由はこうです▼上半分の網に餌がかかると、クモは重力に逆らってそこまで移動しなければならず、その速度は下半分に餌がかかった時より遅い。それで餌が採りやすい下方向に網を広げたというのです。頭の向きも網の形もクモが餌をたくさん採るための合理的な仕組みなんだとか▼クモは陸上の食物連鎖の中間に位置し、餌の昆虫と、鳥やカエルなどの動物をつないでいます。そのため自然環境の状態や変化を知る指標生物になっています。東京電力福島第1原発事故による放射能汚染地域のジョロウグモの体内の放射性物質の濃度を調べた研究がされています(『クモの科学最前線』)▼検出された放射性物質のほとんどは、その直前に食べた昆虫由来だと考えられるそうです。研究結果は「ジョロウグモの放射性セシウム汚染はまだ収束していない」。巧みに生きる小さな生きものが私たちに投げ掛けたものは小さくありません。