2015年9月26日(土)
主張
翁長知事国連演説
新基地阻止の「覚悟」支えよう
沖縄県の翁長雄志知事がスイス・ジュネーブの国連人権理事会で、日本政府が強行しようとしている名護市辺野古での米軍新基地建設について「沖縄の人々の自己決定権がないがしろにされている」と訴え、「私は、あらゆる手段を使って新基地建設を止める覚悟」だと力強く表明しました。これに対し、日本政府の代表が異例の反論を行い、辺野古での新基地建設が「唯一の手段」だとして、工事強行の姿勢を重ねて示したことは重大です。
沖縄の苦難と民意を訴え
翁長知事は21日の国連人権理事会で▽沖縄の米軍基地は第2次世界大戦後、強制接収によって造られたもので、沖縄が自ら望んで土地を提供したものではない▽日本の国土面積の0・6%にすぎない沖縄に在日米軍専用基地面積の73・8%が集中し、基地から派生する事件・事故や環境問題が県民生活に大きな影響を与え続けている―ことを紹介し、「沖縄の人々は自己決定権や人権をないがしろにされている」と訴えました。
その上で「日本政府は、昨年、沖縄で行われた全ての選挙で示された民意を一顧だにせず、美しい海を埋め立てて辺野古新基地建設作業を強行しようとしている」と告発し、あらゆる手段で新基地建設を阻止する決意を語りました。
国連の場を通じ、米軍基地をめぐる戦後沖縄の苦難の歩みや、新基地建設に反対する沖縄の民意を国際世論に訴えたことは、大きな意義を持つものです。
一方で看過できないのは、日本政府代表が、新基地建設計画について1999年に当時の稲嶺恵一知事や岸本建男名護市長から同意を得ており、2013年には仲井真弘多前知事から辺野古の埋め立て承認を「合法的」に受けているなどと、破綻済みの主張を繰り返したことです。
翁長知事が帰国後の記者会見(24日)で指摘したように、稲嶺氏と岸本氏の同意は「15年使用期限」「軍民共用」という条件付きであり、06年に現行のV字形滑走路案で日米が新たに合意した際にほごにされました。仲井真前知事の埋め立て承認も、普天間基地の「県外移設」という自らの公約を破って行われたもので、昨年の名護市長選や県知事選、総選挙などで「ノー」の審判が下されています。
日本政府代表は、沖縄の基地負担軽減に優先的に取り組んでいる例として、今年3月の西普天間住宅地区跡地51ヘクタールの返還を挙げましたが、約2万3千ヘクタールに上る沖縄の米軍基地のわずか0・2%にすぎず、「誇張」(翁長知事)以外の何物でもありません。
傲慢極まりない日本政府
日本政府代表が国連人権理事会の会議後、記者団に「事実関係を無視した知事の発言は国際社会の理解を得られない」と述べたと報じられています。しかし、「事実関係を無視」しているのは日本政府自身であり、傲慢(ごうまん)極まりない態度という他ありません。
翁長知事は仲井真前知事の埋め立て承認について「法律的に瑕疵(かし)がある」とした県の第三者委員会の検証結果を受けて取り消し手続きに入っています。埋め立て承認の「合法」性にも根拠はありません。新基地建設阻止という知事の「覚悟」を支えるため、たたかいと世論を日本全国でさらに大きく広げる時です。