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2015年9月21日(月)

「戦争法廃止の国民連合政府」について

志位委員長の会見 記者との一問一答(要旨)

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 日本共産党の志位和夫委員長の19日の記者会見での記者との一問一答(要旨)は以下のとおりです。発表にあたって、加筆・整理を行っています。


写真

(写真)記者会見する志位和夫委員長=19日、党本部

政党は野党共闘を積み重ねてきた5党1会派に協力を呼びかけていく

 ――今回提唱された枠組みは党首会談をした5党1会派(共産、民主、維新、社民、生活、無所属クラブ)の枠組みを基本とするのですか。

 志位 今回の「提案」は、政党・団体・個人に広く呼びかけるというものです。政党として私たちが念頭においているのは、野党共闘を積み重ねてきた野党5党、そして参議院での1会派です。この方々に私たちの考えをお伝えし、胸襟(きょうきん)を開いて話し合い、協力を呼びかけていきたいと考えています。



「国民連合政府」という政権構想の提唱に、 「提案」の一番の要がある

 ――戦争法(安保法制)を廃止・撤回させるためには、連立政権でないといけないのですか。法案撤回に関しては協力していくということでは選挙協力はできないということですか。

 志位 戦争法を廃止し、立憲主義と民主主義を取り戻すということが、日本の政治にとっての緊急の大問題になっています。そして、「提案」でも述べているように、それを実行するためには、安倍自公政権を退陣に追い込み、これらの課題を実行する政府をつくることがどうしても必要になります。

 戦争法に反対する勢力が衆議院・参議院の選挙で多数を占めて、廃止法案を出し、可決させれば戦争法を廃止することはできます。しかし、それだけでは問題は解決しません。昨年7月1日の集団的自衛権行使容認の「閣議決定」が残ります。「閣議決定」が残る限り、「海外で戦争する国」づくりの火種が残り、政府の勝手な解釈変更によって憲法9条を事実上形骸化するという立憲主義に反した異常状態が続くことになります。この根を断ち切る、「閣議決定」を撤回する、ここまでゆがめられた憲法解釈を少なくとも前の段階に戻すというところまでやらないと、本当の意味で日本の政治に立憲主義を取り戻す、立憲的秩序を回復するということにはなりません。そのためにはそうした課題を実行する政府をつくることがどうしても必要になります。

 今回の「提案」は、“戦争法廃止、立憲主義を取り戻す”という一点での「国民連合政府」をつくろうという政権構想の提唱だというところに一番の要があります。選挙協力は、この一番の要で合意してこそ、本当に力のあるものになると考えます。

選挙協力のためには、「戦争法廃止の国民連合政府」 の合意が必要になる

 ――選挙協力の中身としては、候補者調整などを想定しているのですか。それとも実際に選挙協力、統一候補ということまで考えているのですか。

 志位 選挙協力の形態がどういうものになるのかは、相手のあることなので、いま具体的なところまで言うのは難しいです。

 選挙協力のためには、まず戦争法を廃止して、立憲主義を取り戻すという政治的合意が必要です。そして、その合意を実行するために連合政権をいっしょにつくろうという政権合意も必要だと考えています。

 その一点で合意した勢力で選挙協力をやろうではないかということです。その一点での合意ができた場合に、どういう形態での選挙協力をおこなうかは、協議によって決まってくるものであり、いまあれこれの形態だということを言うことはできません。

 ――選挙協力は、参院選と衆院選の選挙協力をめざすのか。早ければ来年の参院選挙での協力を目指していくということですか。

 志位 もちろんそうです。私たちの「提案」では、すみやかな解散・総選挙を求めています。総選挙と参議院選挙での選挙協力をめざすということです。そのために真剣に対応していきたいと思っています。

 ――5党1会派への呼びかけの時期と、合意形成を目指す時期はどうでしょうか。

 志位 野党のみなさんには、可及的速やかに、私たちの立場をお伝えしたいと考えています。また、団体、個人にも広くお伝えしていきたい。

 ただ、その合意がいつまでにというのは、なかなかこれは私たちだけで決められることではないので、いついつまでということは難しいですが、ぜひ真剣で率直な話し合いができればと願っております。

 ――参院選では全選挙区に候補を立てるという方針がありますが、選挙協力という点で、独自候補を立てないということも否定しないということですか。

 志位 政権協力の合意を土台に選挙協力の合意ができたら、当然、われわれが立てないで相手を推す、あるいは相手が立てないでわれわれを推してくれる、選挙協力にはいろいろな形態がありますが、当然そういうことになります。

 私たちの方針としては、全選挙区に立候補するという方針で取り組みをすすめていますが、選挙協力の合意がなったら、すでに立候補を表明しているところでも調整するということになることは当然です。

閣内協力か、閣外協力かという条件を最初から設定するつもりはない

 ――選挙協力の合意の前提としては、選挙後の政権の枠組みに共産党が閣内に入るという合意がなければ選挙区の協力が難しいですか。

 志位 閣内協力、閣外協力ということは、いま私たちとして何か前提をおいて考えているわけではありません。この「提案」に書いている以上のことは、条件をつけるつもりはありません。

 すなわち、“戦争法廃止、立憲主義を取り戻す”というこの一点での政治的合意があり、そして政権を組むという合意がある場合は、連合政府をつくろうということです。

 安倍政権打倒という声は、いま圧倒的多数の国民のなかに広がりつつあります。ただ、その場合、打倒した後をどうするのか、その後の政権構想が問われます。こうした局面は一過性のものではありません。

 “戦争法廃止、立憲主義を取り戻す”という一点での連合政府こそ、安倍政権を打倒した後の政権のあり方として一番理にかなっており、現実的な道ではないでしょうか。そうした政治的合意、政権合意をつくるうえで、さらにそうした合意に基づく選挙協力をすすめるうえで、閣外か閣内か、そういう条件を私たちから何か最初から設定するものではありません。

安倍自公政権を倒すには、「国民連合政府」まで腹を固めた選挙協力が必要

 ――“共産党と政権をになう”という合意がなければ、選挙協力が難しいということでしょうか。

 志位 私たちの「提案」では、選挙協力は、“戦争法廃止、立憲主義を取り戻す”という一点で連合政府をつくる、というところまで腹を固めたところで、選挙協力をやろうじゃないかといっています。

 なぜそう言っているのか。先ほど述べたように、戦争法を本気になって廃止する、立憲主義の回復を本気でやろうとすれば、政権を代えることが必要不可欠です。この仕事はもとより安倍政権のもとではできません。安倍政権を倒し、それに代わる政権をつくらなければできません。

 戦争法廃止と立憲主義の回復を実行する国民連合政府をつくる、そこまで腹を固めなければ、これは本気のたたかいになりません。“国民的な大義”にはなってきません。そこまで腹を固めることが、選挙協力をするうえで必要です。安倍自公政権を倒すことは、並大抵のことではできません。そこまで腹を固め、“国民的な大義”を鮮明にした選挙協力が必要だというのが、私たちの考えです。

「国民連合政府」の綱領上の位置づけと、これまでにない特徴について

 ――これまでの日本共産党の考え方として、民主連合政府を樹立するという方針がありましたが、その方針とどうちがうのですか。

 志位 わが党の綱領では、政府については、2種類の政府を規定しています。

 一つは、民主主義革命――異常な対米従属と大企業・財界中心の政治を打破して、日本社会の民主主義的な改革を全面的に実行する統一戦線の政府です。綱領では、この政府を、民主連合政府と呼んでいます。民主連合政府の樹立が、私たちの一貫した大目標であることには、変わりがありません。

 いま一つ、綱領では、そこまで条件が熟していなくても、「さしあたって一致できる目標の範囲」での統一戦線の形成と、その上に立つ統一戦線の政府を、一定の条件が生まれたときにつくるために力をつくすということを明記しています。

 今回、私たちが提唱している“戦争法廃止、立憲主義を取り戻す”という一点での国民連合政府というのは、わが党の綱領上では、「さしあたって一致できる目標の範囲」での統一戦線での政府という位置づけになってきます。

 「さしあたって一致できる目標」の政府については、わが党は、過去にそういう政府を提唱してきた、いろいろな歴史的な経験をもっています。その最初の経験は、1960年5月、当時の岸内閣が新安保条約承認の単独採決を強行し、国民の怒りが大きく広がり自民党内からも批判が生まれるなかで、「岸一派をのぞく全議会勢力による選挙管理内閣」を提唱したことでした。

 その後も、わが党は、政治の重大な節々で、「さしあたって一致できる目標」の政府を提唱してきました。直近のものとしては、1989年7月、消費税の強行成立、リクルート疑惑拡大などで国民の怒りが頂点に達し、“日本列島騒然”となったときの、(1)消費税廃止、(2)企業献金禁止、(3)コメの自由化阻止――三つの緊急課題での暫定連合政府の提唱があります。これらは実りませんでしたが、その時々の政治的な力関係、政党配置、政治状況に即した提起として、重要な意義をもつものだったと思います。

 こうした歴史的経験があるわけですが、今回の「国民連合政府」の提案は、これまでのさまざまな政府の提唱と比較しても、その現実性、可能性が、最も大きい提案といってよいのではないかと考えています。また、この連合政府がとりくむ課題としても、国政上のあれこれの部分的な課題ではなく、戦争法を廃止し、日本国憲法の立憲主義、民主主義、平和主義を取り戻すという、日本の政治の根幹部分――土台にかかわる課題を実行しようという点で、これまでにない提案になっていると思います。さらに、こういう重要な歴史的な局面で、連合政府という大目標で一致する野党が選挙協力を行おうというよびかけは、党の歴史でも初めてのことです。その点では、私たちとしても初めて踏み出す新しい方針だといえると思います。

「暫定的な性格」ということの意味について

 ――戦争法廃止の一つの争点で、政権をとり、戦争法の廃止と「閣議決定」を撤回したら、ほかの政策はいじらずに、すぐに解散・総選挙ということになるのですか。「提案」には「暫定的な性格」とありますが、「暫定」とはどのくらいの時間枠ですか。

 志位 「暫定」がどのぐらいの時間枠になるのかというご質問ですが、これはいまの段階であれこれの時間枠の設定をすることは難しいですね。

 「国民連合政府」は、“戦争法廃止、立憲主義を取り戻す”という一点での合意を基礎にした政府です。その意味で、「提案」では、「その性格は暫定的」なものとなること、「戦争法廃止という任務を実現した時点で、その先の日本の進路については、解散・総選挙をおこない、国民の審判をふまえて選択すべきだと考えます」とのべています。これが、基本的な立場であります。ただ、まず、この政府に課せられた、この最大の任務の実行は、それ自体が文字通りの大仕事であり、それがどのくらいの時間枠で達成できるかを、あらかじめ言うことはできません。

 さらに、この政府では、「提案」でのべているように、当面するその他の国政上の問題についても、相違点は横に置き、一致点で合意形成をはかるという原則にたって対応していきたいと考えています。

 そのさい重要なことは、この間の戦争法案とのたたかいの過程で、野党5党で、内閣不信任案を共同して提出したことに示されるように、「安倍政権の退陣・打倒」という点では、政治的な一致がすでに存在しているわけです。そういう政治的一致があれば、安倍政権の国民多数の民意を無視したさまざまな暴走についても、これを許さないという立場に立って、さまざまな協力の一致点が見いだされるのではないか。そういう立場で、一致点で政策的な協定を結ぶようにしたらどうかと考えています。

 一致できないものは横に置き、一致できるものは協力してやっていく。たとえば労働法制の問題などは、日本共産党と他の野党との間で、いろいろな一致点があると思います。そうした一致できるものは実行していくことができるでしょう。

 ですから「暫定的な性格」といっても、その「暫定」がどれだけの時間枠になるかは、いまのべた問題も含めて、さまざまな要素によって決まってくるでしょう。「すぐに解散・総選挙になるのか」というご質問でしたが、その時間枠には、さまざまな幅があると考えています。

 いま一つ、強調しておきたいのは、「暫定的な性格」の政府ということになりますが、そうであっても、さきにお話ししたように日本の政治の根幹部分――土台にかかわる課題を実行する政府という点で、実現するならば、日本の政治にとってきわめて大きな意義を持つ政府になるということです。ですから、「国民連合政府」が成功裏にその任務を達成することができるならば、解散・総選挙での国民の審判を経て、さらに進んだ課題を実行する政府へと発展していくことができるという展望を、私は持っています。

広く団体・個人の方々に「提案」を届け、国民的な共同をつくるために力をつくす

 ――こうした選挙協力を具体的に言及したことは初めてですか。

 志位 選挙協力を部分的に行ったことは1970年代にあります。しかし、今回のように、政権構想で一致する野党間で、衆議院選挙、参議院選挙において選挙協力を行おうというところまで踏み込んで方針を提起し、各党に呼びかけるということは、党の歴史でも初めてのことです。

 ――個人への具体的な呼びかけのイメージ、対象はどういうことになりますか。

 志位 団体・個人の方々への呼びかけは、うんと広く考えています。

 まず何よりも、今回の戦争法案に反対するたたかいの過程で、これまでにない空前の広がりをもって、さまざまな団体・個人の方々が反対の声をあげられているわけです。圧倒的多数の憲法学者、歴代の内閣法制局長官、元最高裁長官や元判事の方々も含めて、知識人・文化人、若者、女性、労働界、そして日本社会のほぼすべてを網羅するような各界・各層の団体・個人から反対の声があがりました。

 私たちは、戦争法案に危惧の声、反対の声をあげたすべての団体・個人の方々に、私たちの「提案」をお届けし、胸襟を開いて語り合い、協力を広げていきたいと考えています。さらにこれまで声をあげてこなかったけれども、今回の政府の横暴ぶりをみて「これは大変だ」と、これから声をあげる方々もたくさん出てくると思います。そういう方々も含めて広く「提案」をお届けし、国民的な共同と合意をつくるために、あらゆる力をつくしたいと決意しております。

この「提案」が実るかどうかの成否は、何よりも国民の世論と運動にかかっている

 ――共産党の提案に野党5党1会派が応じるという見通しはどうでしょうか。

 志位 もちろんさまざまな難しい要素もあるとは思いますが、大いにその可能性は存在していると考えています。

 その根拠は、冒頭にも申し上げましたが、この間のたたかいの過程で、五つの野党、1会派で、繰り返し党首会談を重ね、強引な採決に反対する、法案の成立を阻止する、最後は内閣を倒していくという政治的合意がつくられ、そうした合意に基づいて結束して行動してきたということにあります。

 そして昨日(9月18日)の党首会談では、今後も、憲法の平和主義、立憲主義、民主主義を守るために協力していこうということまで合意しました。そうした積み重ねを踏まえるならば、私は、政党間で互いにいろいろな考えや立場、日本共産党と立場の異なる点があるでしょうが、そういうことを乗り越えて合意に至る可能性は、大いにあるのではないかと思います。私たちはそれを最大限追求していく決意です。私たちの「提案」をお伝えし、この方向が実るように誠実かつ真剣に力をつくす決意です。

 そのうえで、この「提案」が実るかどうかの最大の“カギ”が何かといえば、国民のみなさんの世論と運動だと思っております。私たちが、こういう方針を決定した経過は、私たち自身が国民のみなさんの運動に一緒になって参加して、そのなかで私たちにぶつけられた声を、真剣に受け止めなければならないと考えたということがあります。

 その声は何かといえば、「戦争法案をつぶしてほしい」ということとともに、「安倍政権を倒してほしい」、そして、そのためには「野党がばらばらではなく一つにまとまってほしい」という痛切な声でした。

 国民のみなさんからそうした痛切な声が寄せられる。そのときに野党がそうした痛切な声にこたえなければ、いま日本の政治を変えようと、自らの意思で立ち上がり、声をあげている人々の期待を裏切ることにもなります。国民のみなさんの声を、私たちとして真剣に受け止め、党としてこういう方針に踏み切ることにしました。

 また、何よりも、日本の政治は、安倍政権の暴挙によって、平和主義、立憲主義、民主主義が根底から脅かされる、いわば非常事態に立ち至っています。そうした非常事態にあって、日本共産党が、これまでの枠内の対応にとどまっていては、政党としての責任を果たせないことになる。ここは従来の延長線上ではない大胆な対応がもとめられる歴史的局面であると考えました。

 今日、「提案」した「戦争法廃止の国民連合政府」の成否は、何よりも国民の世論と運動にかかっています。どうか、国民のみなさんが、「戦争法が通ってしまったから仕方ない」ということではなく、「このようなとんでもない違憲立法は廃止しよう」「立憲主義と民主主義を取り戻そう」と、さらに運動を大きく発展させていただきたい。そして、「そのためにはそれを実行する政府をつくろう」という声が、運動が、大きく広がることを、私は、心から願ってやみません。この「提案」の成否は、国民のみなさんのなかで、そうした世論と運動がどれだけ広がるかにかかっていると思っています。

 私たちは、政党間で、真剣に話し合いをさせていただき、前向きの合意を得るために力をつくしたいと思っております。同時に、広く団体、個人のみなさんに呼びかけて、広く国民とともにたたかい、国民の世論と運動の力に依拠して、「提案」で示した方向を実現していきたい。すべての政党・団体・個人が協力して、安倍自公政権を倒し、新しい政府をつくり、戦争法を廃止し、憲法の平和主義・立憲主義・民主主義を貫く新しい政治をつくる。そのために、どうか国民のみなさんに応援していただきたい、ともにたたかおうではないか、ということを心から訴えたいと思います。

 ――参院選の前に衆院選と書いてあるのは、来年の参院選を前に衆院解散に追い込みたいということですか。

 志位 その通りです。この「提案」の基本的立場は、違憲立法である戦争法はただちに廃止すべきだ、それが早ければ早いほうがいいということです。

 それをやろうと思ったら、当然、衆参の国会での多数が必要ですから、すみやかな解散・総選挙に追い込んでいくということです。「戦争法廃止の国民連合政府」の旗印を高く掲げて、すみやかな解散・総選挙を要求していきます。そういう立場でたたかっていきたいと決意しています。


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