2015年9月6日(日)
陸自 米で「敵基地征圧訓練」 米機から降下 海外で初
戦争法案を先取り
陸上自衛隊の海外任務部隊である中央即応集団所属の第1空挺(くうてい)団(千葉県・習志野駐屯地)が、アメリカ本土の米軍基地で、パラシュート降下による「敵基地の征圧訓練」を米陸軍と実施していたことが陸上幕僚監部などへの取材で分かりました。同空挺団の海外での降下訓練は創設(1954年)以来初めて。米空軍はじめ英国、豪州などの「多国籍有志連合」空軍の支援による事実上の集団的自衛権行使・戦争法案先取りといえるものです。米軍は「歴史的な降下」(横田基地ホームページ)と絶賛。軍事関係者は、集団的自衛権行使容認の閣議決定、日米新ガイドライン合意、戦争法案制定などに暴走する安倍政権のもとでの「演習の広がりの一つ」と指摘しました。(山本眞直)
同訓練は、7月27日から8月28日にアメリカのアラスカ州エルメンドルフ・リチャードソン統合基地及び周辺訓練場とドネリー訓練場で行われました。訓練名は「アークティック・オーロラ」。
陸自の第1空挺団員約50人と米陸軍歩兵旅団戦闘団約500人が、米軍横田基地所属のC130輸送機に同乗していっせいに降下、「ドネリー訓練場にある滑走路を設定し、降下場を確保した」(陸幕)といいます。
陸自、米陸軍の共同訓練ですが、同時並行で実施された米軍、空自はじめイギリス、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、タイの7カ国空軍による多国間軍事演習「レッドフラッグ・アラスカ」の一環として今年初めて実施しました。
米軍の指揮官(大佐)は、「空輸が中心だが、この訓練には戦闘機、支援機を含む数カ国の多国籍の統合部隊が飛行場確保の役割を果たした」(横田基地ホームページ)と事実上の有志連合による「日本防衛」とは無縁の集団的自衛権行使の軍事作戦であることを示唆しました。
陸自の指揮官は「われわれは限定的な現実世界の紛争経験を行い、多くの分野で経験を積んだ」(同)としています。
中央即応集団(CRF) 国際平和維持活動(PKO)など海外任務の専門部隊として2007年3月に防衛大臣直轄部隊として新編。第1空挺団、陸自唯一の特殊部隊の特殊作戦群など七つの専門部隊を隷下におき、司令部は在日米陸軍司令部に隣接する陸自座間駐屯地(神奈川県座間市)。
解説
交戦規則 米軍と共通の指摘も
「歴史的な降下」と米軍が絶賛した陸自第1空挺(くうてい)団の米本土での空中機動作戦。同空挺団が単に米国で降下訓練をしたということにとどまりません。
米空軍輸送機(横田基地所属C130ハーキュリーズ)から米陸軍空挺部隊とともに降下、「敵基地を征圧、飛行場を確保」という作戦を実施したことにあります。
しかも第1空挺団が使用したパラシュートは同訓練に合わせて米軍仕様のパラシュートを購入したもの。これは訓練記事を掲載した横田基地のホームページの写真を見て、千葉県平和委員会が「米軍と同じものを使っている」と防衛省に問い合わせた結果、同省が「50着分を用意した」と回答したものです。
陸自の小銃、機関銃、対人狙撃銃からパラシュートにいたる装備は米軍と共通となれば、「ROE(交戦規則)も共通にした可能性がある」との見方も軍事関係者で指摘されます。
第1空挺団は自衛隊唯一の降下部隊です。自衛隊の海外任務を先導する中央即応集団の一員として、すでにイラク派兵や自衛隊の唯一の海外基地、アフリカのアデン湾にある自衛隊活動拠点での航空機などの警備任務と「対テロ戦争」の先端を担っています。