2015年8月19日(水)
新国立競技場は「白紙撤回」なのに
近接地に新ビル 国費など47億円 JSCのオフィス
政府「計画見直さず」
国民の強い批判の前に建設計画が「白紙撤回」となった新国立競技場に隠れて、事業主体の独立行政法人「日本スポーツ振興センター」(JSC)の新オフィスが47億円の国費などをかけて建設されるという新たなムダが明らかになりました。
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建設されるのは、6月30日に契約が交わされた「日本青年館・日本スポーツ振興センター本部棟新営工事」。受注したのは、中堅ゼネコン「安藤・間」で、契約額は164億7000万円です。
新競技場建設予定地内に位置するため、移転を迫られた日本青年館の「建て替え」にともなうもので、近接地に地上16階(地下2階)、高さ約70メートル、延べ面積3万2000平方メートルの新ビル計画です。オフィスのほかに全220室のホテル、劇場(1250席)、会議室からなる大型複合インテリジェントビルです。
これまで国立競技場のなかにあったJSCは、便乗する形で、この新ビルの3フロアに入居する予定です。
問題は、この建設費。JSCの河野一郎理事長は、10日の参院予算委員会で、164億円のうち、JSCが負担するのは47億円で、内訳は、「国費およびスポーツ振興くじ」と明らかにしました。
ゼネコンのいいなりで、総工費が2520億円にふくらみ、新国立競技場は「白紙」になったのに、税金とスポーツの普及に使われる「toto」の売り上げ計47億円が投入される、みずからの本部ビルは「白紙」にしないのか―。
参院予算委員会で、遠藤利明五輪担当相は、「ゼロベースで検討を行う対象は、新国立競技場本体の設計、施工のみ」と説明。JSCを指導・監督する立場の下村博文・文部科学相も、「旧来の国立競技場よりは相当規模が大きくなるということを考えるなかで、周辺についての見直しは考えていない」といずれも、新ビル計画を見直す考えのない姿勢を示しました。
JSCの河野理事長も「文科省とご相談のうえ、ご指示を受けながらこれまでも進めてきております」とひとごとのような答弁でした。
理事の2人は文部官僚OB
JSCの4人の理事のうち、2人が大臣官房国際課長、大臣官房審議官を務めた文部官僚OBです。
政府は14日、新国立競技場の整備計画の見直し方針を決定しましたが、従来の巨大施設案で立ち退きを迫られている都営霞ケ丘アパートの住民のことは置き去りのまま。そのうえ、誰も責任を取らず、税金を使って自分たちのオフィスをつくることに国民の批判が高まるのは必至です。
日本スポーツ振興センター(JSC) 文部科学省所管の独立行政法人。「スポーツの振興と児童生徒等の健康の保持増進を図るため、その設置するスポーツ施設の適切かつ効率的な運営、スポーツの振興のために必要な援助」などを目的に掲げています。2020年東京五輪・パラリンピックの主会場となる新国立競技場建設の事業主体。サッカーくじtotoの運営・発行もおこなっています。