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2015年8月12日(水)

国会審議無視 日程すべて決定

統合幕僚監部 戦争法案成立前提の計画

参院安保特委 小池議員の追及

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 日本共産党の小池晃議員が11日の参院安保法制特別委員会で暴露した統合幕僚監部の内部資料は、戦争法案の成立を前提に新ガイドライン(日米軍事協力の指針)を実施するための詳細な計画が記されています。これほどの国会無視・反国民的な実態が明らかになったのは国会史上でも異例です。


写真

(写真)小池晃議員の追及で答弁不能になり委員や官僚に取り囲まれる中谷防衛相と岸田外務相=11日、参院安保法制特委

新指針と一体

 陸海空自衛隊の一体的運用を行う統合幕僚監部は、同資料を、戦争法案が審議入りした5月末に作成。これに先立つ4月27日に、日米両政府は新ガイドラインを合意しました。

 資料は、「ガイドラインの記載内容については、既存の現行法制で実施可能なものと、平和安全法制関連法案(戦争法案)の成立を待つ必要があるものがあり、ガイドラインの中では、これらが区別されることなく記載されている」と明記。この記述から、戦争法案が成立しなければ、ガイドラインは実施できないものであることが明確です。国会や国民を日米合意に従属させる、戦争法案の本質をあらわにしています。

軍・軍調整所

 資料はさらに、新ガイドラインの核心である「同盟調整メカニズム」(ACM)について、発表された合意事項にない内容を明記しています。

 ACMは、「平時」から自衛隊を事実上、米軍の指揮下に組み込む枠組みです。同メカニズムには政府機関も含まれていますが、資料に「ACM内には、運用面の調整を実施する軍軍間の調整所が設置される」と明記。ガイドラインが一言もふれていない、米軍と自衛隊が直接、作戦計画について「調整」を行う機関の設置が明らかになりました。

 小池氏は、資料にある「軍・軍とは米軍と自衛隊のことか。自衛隊はいつから軍になったのか」と追及。さらに、「これはまさに、米軍・自衛隊の共同司令部だ。明らかな憲法違反だ」と指摘しました。

 政府は、戦争法案に基づく「戦闘地域」での米軍に対する兵たん支援について、「主体的に判断する」と繰り返しています。しかし、このような枠組みが設けられれば、どんなに危険でも途中で逃れられない米軍との一体化が加速することになります。

図
(拡大図はこちら)

駆けつけ警護

 小池氏が委員会終了後の記者会見で「極めつき」だと指摘したのは、戦争法案の8月成立・来年2月施行を前提に、自衛隊の部隊運用に関する詳細な日程を作成していたことです。(表)

 これによれば、ACMの運用は、日米の外務・防衛局長級からなる防衛協力小委員会(SDC)が文書を発出し、8月から開始されるとしています。「現時点で設置の具体的な期限が定められているわけではない」(中谷防衛相、7月8日)という答弁に真っ向から反します。

 また、来年1月には、新ガイドラインと戦争法案を前提とした日米共同統合指揮所演習(キーンエッジ16)を実施することも決めて、2016年度の自衛隊の防衛・警備等に関する計画に演習の成果や法案を反映すると明記しています。

 さらに資料は、陸上自衛隊・南スーダンPKO(国連平和維持活動)について、来年3月から法案を反映させることを盛り込んでいます。資料には、8月末からの第9次部隊の派遣を明記。南スーダンPKOの派遣延長は7日に閣議決定されたばかりですが、法案も成立していない段階から、戦争法案に基づく運用を想定している疑念を抱かざるを得ないものです。

 武器使用については、自己保存のための武器使用ならば「どのような場面でも憲法第9条との関係で問題にならない」などと勝手な憲法解釈を行って範囲を拡大。法施行とほぼ同時に「宿営地の共同防衛」や「駆けつけ警護」を実施することも盛り込んでいます。

“内閣総辞職を”の声も

委員会に衝撃

 「法案成立が8月になっているじゃない!」「参議院はいらないのか!」―。

 日本共産党の小池晃議員による防衛省統合幕僚監部の内部文書の暴露で、お盆休み前の参院安保法制特別委員会に、衝撃が走りました。

 小池氏の質問開始とともに議場に内部文書の複写が委員会資料として配られると、食い入るように目を落とす議員たち。防衛省が5月末の時点から、8月の法案成立を見越して「今後の方向性」を検討していたことを小池氏が明らかにすると、議員からは「(内閣)総辞職ものだ」「法案を撤回しろ」などと一斉に驚きと怒りの声があがりました。

 文書の存在と、防衛相の作成への関与をただす小池氏に対し、「法案は国会審議が第一だ」などと、なんらまともな説明をしようとしない中谷元・防衛相の答弁。審議は繰り返し中断されます。小池氏は資料に盛り込まれた詳細な計画を示し、「これはすべて法案の成立を前提とした、克明な自衛隊の運用計画だ。戦前の『軍部の独走』と同じだ。こんなことは絶対に許されない」と力をこめました。

 小池氏の追及で、鴻池祥肇(こうのいけ・よしただ)委員長はたまらず「止めてください」と速記中止を指示。委員長席周辺には与野党の理事が、中谷氏の周辺には防衛省幹部らが多数集まって緊急に協議が行われた結果、鴻池委員長は2回目の休憩を宣言しました。

 休憩中に開かれた理事懇談会で、「文民統制(シビリアン・コントロール)に関わる問題だ」としてこの日の審議継続は不可能と主張する野党の提案を受け、鴻池氏は散会を決めました。

 ある自民党議員は小池氏の追及を受け、「これは不手際だ」と政府の対応を問題視。与党理事の一人は「この事態で国会は不正常な状態だ。(盆明けの)与野党間で協議するしかない」と、盆明けの審議再開の見通しが立たなくなった現状を苦々しく語りました。

 (池田晋)


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