2015年8月7日(金)
主張
「存立危機事態」
米補完部隊として参戦が狙い
米国が海外で始めた戦争で、米艦が敵艦をミサイルで攻撃しているさなか、自衛艦が米艦を防護したり、「後方支援」したり、機雷掃海をしたりする―。戦争法案が盛り込んだ集団的自衛権行使の具体例として、自衛隊と米軍が一体となった海上作戦が可能になることが、国会審議で明らかになっています。日本が武力攻撃を受けていないにもかかわらず、自衛隊が海外で、米軍の補完部隊として、際限のない武力行使に乗り出す危険を示すものです。法案の違憲性はいよいよ明瞭です。
日米共同の海上作戦
戦争法案は、政府が海外での戦争を「存立危機事態」だと判断すれば、集団的自衛権を発動して自衛隊が武力行使できることを定めています。(事態対処法案など)
日本共産党の仁比聡平議員が参院安保法制特別委員会(4日)で示した海上自衛隊の内部資料は、集団的自衛権を行使する「存立危機事態」での「海上作戦」の例として▽機雷掃海▽米艦防護▽後方支援▽停船検査―を挙げています。
機雷掃海と米艦防護は「武力の行使として実施する」(中谷元・防衛相)ものです。
後方支援は、戦争法案の他の法案(重要影響事態法案、国際平和支援法案)では「現に戦闘行為が行われている現場(戦闘現場)では実施しない」との規定があるのに対し、「存立危機事態」では武力行使の一環として行われ、「戦闘現場」でさえ可能です。
停船検査も、「重要影響事態」での旗国の同意に基づく船舶検査とは違い、強制措置として行うものであり、従わない場合には戦闘になる危険があります。
重大なのは、これらの作戦を同時・一体的に実施することも法案が排除していない点です。
海自の内部資料には、米艦が敵艦をミサイル攻撃している傍らで自衛艦が敵潜水艦の探知をしたり、自衛艦が機雷掃海や米艦への後方支援、停船検査を行ったりしている図があります。「いわば日米の統合作戦、日米共同の海上作戦例」(仁比氏)に他なりません。
機雷掃海について安倍晋三首相は、事実上の停戦合意がある場合に限られるなどと述べてきましたが、海自内部資料は、戦争のさなかでも可能なことを示すものです。米艦防護では、中谷防衛相が仁比氏の追及に、米艦への攻撃がなくても探知した敵潜水艦を攻撃することも否定しませんでした。
仁比氏が指摘したように、これらの海上作戦は、日米両政府が4月に合意した新「日米軍事協力の指針(ガイドライン)」に明記されており、「単純なイメージ図」(安倍首相)などという言い逃れはできません。
自衛隊の性格を一変
新ガイドラインは、「日本以外の国に対する武力攻撃への対処行動」で日米が「緊密に協力」するとし、自衛隊と米軍の共同作戦例として、「機雷掃海」や「艦船を防護するための護衛作戦」、「敵に支援を行う船舶活動の阻止」といった「海上作戦」を挙げています。
戦争法案による集団的自衛権行使の狙いが、海外で米国が乗り出す戦争に全面協力することにあるのは明白です。これは、政府が「日本防衛のための必要最小限度の実力組織だから合憲」としてきた自衛隊の性格を一変させるものであり、廃案は当然です。