2015年8月3日(月)
NHK日曜討論 井上参院幹事長の発言
日本共産党の井上哲士参院幹事長は、2日のNHK「日曜討論」で、戦争法案をめぐり各党参院議員と議論を交わしました。
集団的自衛権行使の例外規定なし。 歯止めない海外派兵へ
番組ではまず、「集団的自衛権と憲法との関係」がテーマとなり、合わせて先に「法的安定性は関係ない」などと述べた礒崎陽輔首相補佐官の暴言も取り上げられました。礒崎発言に関し自民党の佐藤正久議員は「誤解を招くような発言は看過できない」と表明。公明党の荒木清寛議員も同様の認識を示しました。
井上氏は礒崎発言について「まさに誤解ではなくて彼の確信を述べたものだ」と批判したうえでこう続けました。
井上 参院の3日間の審議のなかだけでも、戦争法案が違憲であり、かつ危険なものであることが浮き彫りになったと思います。安倍首相はさかんに、“集団的自衛権は限定的な行使容認なので、一般に海外派兵はできないということは変わらない”ということをいわれます。しかし私の質問に対し、海外派兵禁止というのは条文にはないこと、そして「必要最小限度(の武力行使)」と判断されれば例外的にあり得て、しかも何が例外かということは規定がないこと、結局は時の政権が事態に応じて判断するということを答弁されました。私は重大だと思います。
結局、例外だとして海外派兵がどんどん広がっていくということになる。礒崎さん自身が「国際情勢によって必要最小限度は変わる」といわれているわけですから、「限定的」といっても実際には歯止めなく海外派兵が広がっていく。まさに憲法違反の法案だと思います。
自衛隊は中東での戦闘を模した米との共同訓練まで実施
佐藤議員が、「集団的自衛権の行使は新3要件で歯止めをしている。(海外派兵が)野放図にどんどん拡大するものではない」などと述べたのに対し、井上氏は次のように批判しました。
井上 (政府は)これまでは集団的自衛権は「必要最小限度」を超えるといっていたのに、安全保障環境が変わったから限定で認めるというわけです。首相は「限定的だ」といいますが、国際環境が変わるということで結局、時の政権の判断でどんどん歯止めなく(海外派兵が)広がっていくのではないか。
現に、自衛隊は先取りした訓練を行っています。私も質問で取り上げましたが、陸上自衛隊がアメリカに行ってイラクやアフガニスタンに展開した米陸軍ストライカー戦闘旅団と共同訓練しています。鳥取砂丘の90倍もあるような砂漠の訓練場で。そこには中東を模した集落もある。アラブ系の俳優が住民の役までやっているわけです。明らかに中東を念頭に置いた共同訓練までやっていることを見れば、結局、派兵をどんどん歯止めなく拡大して「専守防衛」とまったく無縁な方向に行く。「環境が変われば集団的自衛権の行使ができる」ということになれば、こうなることは明確だと思います。
軍事の悪循環は絶対だめ。 平和の外交戦略こそ持つべきだ
次のテーマは、「安全保障環境の変化」で、とくに中国や北朝鮮問題をめぐり佐藤議員は「切れ目ない法整備で平時から抑止力を強化する」などと主張しました。
井上 たしかにこの地域には北朝鮮の核問題であるとか、領土にかかわる紛争とかいろいろな問題があります。しっかりというべきことはいいながら、やはり外交的解決を図ることが必要だと思うのです。
たとえば中国との関係でいいますと、いま輸出も輸入も日本は中国が一番(の相手国)です。外務省のホームページを見ても、「日中間の経済関係は緊密かつ相互依存になっている」といっているわけです。軍事衝突になるとお互いに大変な事態になるわけですから、そういうことは誰も望んでいないし、あってはならない。
いまの政府の対応を見ていると、軍事的な対応に偏重しすぎています。軍事に対して軍事で構えるという悪循環は絶対にいけないと思います。憲法9条に基づいた平和の外交戦略こそしっかり持つべきであるし、日中韓の首脳会談もできていない状況の改善にしっかり努力することが必要だと思います。
兵たんほど狙われやすい。 「戦闘地域」でリスクは格段に増大
番組ではいわゆる「後方支援」の問題も議論となり、司会者は、「このテーマではまず、共産党の井上さんに口火を」と求めました。
井上 「後方支援」の名による輸送などの兵たん活動というのは外国から見れば武力行使そのものですから、明白な憲法違反だと思います。
リスクという点でいいますと、とくに「対テロ戦争」では、兵たんほど狙われやすい。これはわが党の小池晃副委員長(参院議員)が質問しましたけれども、イラクとアフガニスタンでは米軍の燃料や水の補給任務中に3000人以上の死傷者が出ているわけです。米軍の研究所は「戦場での燃料、水の補給は命がけ」だと書いています。政府は“米軍とは違う、日本は安全な場所で行う”といいますが、アフガニスタンで米軍以外の犠牲者を見ると、4分の3は路肩などに仕掛けられたIED(即席爆発装置)によるもので銃撃戦ではないのです。
「対テロ戦争」というのは突然そこが戦闘現場になるわけですから、これまで行けなかった「戦闘地域」まで行くことになれば格段にリスクが増すことは明らかだと思います。
国民の理解が進むほどに反対世論が増えている
最後に今後のたたかいについて井上氏はこう力説しました。
井上 戦争法案に対しては、国民の理解が進むほどに反対が増えていると思います。衆院での強行採決が怒りをさらに広げている。
おととい(7月31日)の夜もSEALDs(シールズ=自由と民主主義のための学生緊急行動)のメンバーと学者の皆さんが共同行動をされ、深夜まで2万5000人の人びとが国会を囲んで怒りの声を上げました。憲法学者の9割、国民の6割が違憲と答えているわけですから、さらにこういう声を広げて、参院で強行採決できないし、「60日ルール」を使った衆院での再議決の強行もできないような状況を、論戦と国民的たたかいで何としても広げ、廃案に追い込みたいと思います。