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2015年7月31日(金)

自衛隊機 高裁も夜間禁止

米軍駐留中の将来被害を認定

厚木爆音訴訟 米軍機は認めず

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 厚木基地(神奈川県大和、綾瀬両市)の周辺住民6900人余りが国に対し、米軍機・自衛隊機の夜間早朝の飛行差し止めと爆音被害の損害賠償を求めた第4次厚木基地爆音訴訟の控訴審(東京高裁、斎藤隆裁判長)は30日、一審の横浜地裁判決に続き、自衛隊機の夜間・早朝の飛行を差し止める判決を出しました。


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(写真)支援者に勝訴を伝える弁護団=30日、東京高裁前

賠償増額94億円に

 斎藤裁判長は、爆音による睡眠妨害が健康被害に直接結び付き得ると指摘。米海軍第5空母航空団が岩国基地(山口県)に移駐(2017年ごろ)するまでは、高度の蓋然(がいぜん)性(確率)をもってこれまでと同様の騒音被害が継続すると認定し、16年末までの期間、自衛隊機の午後10時〜午前6時の飛行差し止めを認めました。損害賠償についても、過去の被害だけでなく、16年末までの将来の被害分12億円を含む94億円の支払いを命じました。

 判決は、米軍が駐留を継続する限り、爆音による住民の健康被害が高い確率で発生するとの認識に立って、米軍の駐留中に発生する将来の被害への賠償を認めた、初の判決となりました。

 一方、米軍機の飛行差し止めについては、防衛相の行政権が及ばないとして一審判決同様、認めませんでした。

 中谷元防衛相は記者団に対し「一部でも差し止めの判断は受け入れがたい」として、最高裁への上告を検討する方針を明らかにしました。

“一歩前進”“涙が出た”

 厚木基地騒音訴訟で、自衛隊機の夜間早朝の飛行差し止めだけでなく、将来分の賠償も認めた30日の東京高裁判決を受け、東京・霞が関の高裁前では、原告の片柳義春さん(57)が「涙が出た」と喜びました。

 午前9時半ごろ、原告約110人が高裁に入りました。

 10時からの判決後、弁護士が高裁前で「爆音違法賠償勝訴」「自衛隊機差し止め勝訴」という内容を掲げると、法廷内に入り切らなかった原告数十人は「おー」という歓声とともに拍手しました。

 弁護団の福田護副団長は高裁前で、取材陣に判決を「一歩進んだ。大きな成果だ」と評価。一方で、米軍機の差し止めまでは認めなかったことは「残念だ」と話しました。

解説

被害解消へ国は具体措置を

 第4次厚木基地爆音訴訟の東京高裁判決は、住民に爆音被害を与えている大本が、米軍機であることを改めて浮き彫りにしました。判決は自衛隊機の騒音について「米軍機の離発着によって生じている騒音状況にさらに騒音を加えるもの」だと指摘しています。

 米海軍第5空母航空団は、FA18E/Fスーパーホーネット戦闘攻撃機をはじめ約80機の航空機が所属しています。

 判決が、自衛隊機の夜間・早朝の飛行差し止めの期間を2016年末と限った前提には、17年ごろに第5空母航空団の岩国基地(山口県)への移転で、厚木基地の爆音が軽減されるとの判断があります。

 ただ、厚木基地には、岩国基地所属の米海兵隊FA18戦闘攻撃機や、海兵隊普天間基地(沖縄県)のMV22オスプレイも飛来しており、岩国基地に第5空母航空団が移駐しても、米軍機の爆音被害は続くことになりかねません。

 その点で、自衛隊機の飛行差し止めの期間を限定したこと、米軍機について被害が大きいことを認めながら飛行差し止めを却下したことで、判決は不十分さを残しました。

 判決は、後から基地周辺に転居してきた原告住民の賠償を、国が減免するよう求めたのに対して「3度にわたる確定判決がありながら違法状態を解消していない」と退けました。米軍機の爆音による住民被害の軽減・解消には、国が違法状態を解消する具体的措置をとることこそ必要です。

 (佐藤つよし)


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